2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740299
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
末松 信彦 明治大学, 先端数理科学研究科, 講師 (80542274)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 物理化学 / 非線形現象 / 自己組織化現象 |
Research Abstract |
本研究は集団運動を系統的に研究することが可能な無生物系のシステムの構築を目指して行われている。対象としたのは、水面を自発的に滑走する、樟脳船と呼ばれるシステムの集団運動である。この樟脳船は、円形の擬一次元水路に多数浮かべると、時空間的な周期構造を示すことをすでに我々は報告している。本研究においては、このシステムを拡張し、(1)2体の樟脳船間の相互作用機構の解明、(2) 単体の運動特性と集団運動の関係性の解明、(3)2次元場における樟脳船の集団運動の、主に3つの目的に分けて計画を立ててきた。当該年度は(1)および(2)の一部を行うよう計画されていた。 当該年度は表面張力計を導入し、樟脳船の周囲における表面張力の空間勾配を計測するとともに、可視化粒子を用いて2体の樟脳船の周囲における対流構造の観察を行った。この結果、表面張力および対流の2つの視点から2体の樟脳船の間にはたらく相互作用を明らかにした。表面張力の空間的な分布については、樟脳船周囲における樟脳分子のふるまいに立脚した数理モデルの解析を行い、そこから得られた結果を踏まえることで、より正確な相互作用の導出を行った。この研究成果は、当該年度の3月に行われた日本化学会92春季年会にて発表した。また、複数の樟脳船が塊で運動するクラスター状態の出現が、樟脳船単体の速度および相互作用範囲に依存する事を示唆する結果を得た。 さらに、2次元系における樟脳船の集団運動の観察も行い、数密度がある一定以上に増えると停止と運動を周期的に繰り返す間欠運動が現れることを発見した。一定数以上になると樟脳船は動かなくなることは既に知られていたが、間欠運動の発現は新たな集団運動の発見である。加えて、ゲルシステムを用いて樟脳濃度をコントロールすることで、樟脳船同士の間欠運動が同期する現象も観察した。この新たな現象については、発表に向けて論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、(1)2体の樟脳船間の相互作用機構の解明および(2)単体の樟脳船の運動特性と集団運動の関係までが初年度に行うべきところであった。(1)については年度の前半に実験結果を得ることができ、成果をまとめて学会発表を行うことができた。(2)についても年度の中ごろから成果を出し始め、本研究成果から発展した共同研究においても2報の論文執筆に至った(次年度の4,5月にアクセプト)。さらには上記の2点に加えて、当初の計画では2年目に行う予定であった(3)2次元系における樟脳船の集団運動の観察まで行い、有意な結果を得ることができた。すなわち、2次元水面に樟脳船を多数浮かべると、ある数密度以上において樟脳船の間欠運動が見られること、さらに個々の樟脳船の間欠周期の位相が揃う、同期現象が確認されることを発見した。この様に当初の計画が順調に進んだことで、さらに実験系を拡張することが可能となった。加えて、当初計画していた実験を拡張し、樟脳船単体が実際に出力している力の直接測定や、界面活性剤水溶液表面における単体樟脳船の運動特性に関する観測などを行い、研究をより発展的なものにした。以上の成果から、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に当初の計画以上に順調に実験結果を出すことができた。今年度は、これらの研究結果をさらに発展させるとともに、成果を論文にまとめ、期間内に順次出版していくことを主に進めていく。また、今回の結果を礎として、数理科学的な研究へと発展できるよう進めていく。研究の発展としては、単体の運動特性と集団運動の関係に関する実験および2次元系における樟脳船の集団運動に関して、明確な相図を書き、定量的なデータを揃える。これらの実験を夏までに行い、秋以降に論文としてまとめる。今年度の研究成果の出版に関しては、樟脳船間の相互作用についての研究と船の力学測定の結果を一つの論文にまとめることを進める。さらに単体の運動特性を制御することで、「クラスターモード」という新たな集団運動が発見された結果についても論文執筆を進めている。これらの成果を、秋をめどにして執筆を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、アメリカで行われる国際会議に出席するための渡航費、学会参加費等に40万円を計上する。この学会では、自律運動系のセッションが組まれており、本研究に関わる重要な講演が多く予定されているので、そこで情報収集を行うとともに議論を重ねる。加えて、研究議論を目的として国内出張費15万円を計上する。本研究に関わりの深い研究が広島大学の研究グループおよび北海道大学の研究グループで進められているので、各々の大学に赴き、情報交換および研究議論を重ねることで、本研究の推進に役立てる。また、論文執筆を計画しているので、その校閲料として5万円を計上する。その他、実験で使用する薬品や実験器具類、結果を記録するメディア類など、消耗品に合わせて30万円を計上する。
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Research Products
(6 results)