2011 Fiscal Year Research-status Report
長期モニタリング観測による火山雷発生メカニズム推定
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23740332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相澤 広記 東京大学, 地震研究所, 研究員 (50526689)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 火山雷 |
Research Abstract |
平成23年度は、第一に可視映像観測システムを構築した。桜島昭和火口から3.5 kmの距離にある京都大学観測室に高感度カメラ(業務用)を設置し、カメラモジュールからの映像出力信号の各フレームに対して、GPS時刻に同期させた時刻情報を埋め込み、30フレーム/秒の動画を1分毎にデジタル記録するシステムをUbuntu Linuxを基に構築した。動画は解像度と動画容量のバランスを考え、wmv形式に圧縮した。1分間あたりの容量はおよそ6MBである。映像は現在まで欠測なく取得されており、悪天候時以外は噴煙および火山雷が明瞭に識別できる。特に夜間の噴火では多い時に1イベントで100を超える火山雷が認識できるようになった。また、予想外の結果として、リターンストロークに先行するステップトリーダーが映像に認められる例が複数例見つかった。その多くは火口周辺の大地から、噴煙に向かって電流が進展しており、桜島火山雷は大地からの放電によりスタートするという新たな知見が得られた。可視映像システムの構築後、雷観測システム(磁場変動観測)のテストを行った。Boltek社製Stormtracker 1台とデスクトップPCを購入し、火口からの距離が異なる様々な場所に設置し火山雷に対する感度チェックを行った。その結果、桜島島内であれば可視映像に見られる火山雷のほぼ全てを検出できること、桜島島内から50km以上離れた霧島地域においても30パーセント程度を検出できることを確認した。両者とも発生方向が火口の方向に決定されており、通常の気象雷より電流値が微小である火山雷でも、複数の観測点を設置すれば、その発生場所、および発生時刻を正確に決定できることが分かった。複数の観測点を設置するため平成23年12月に追加で3台を発注したが、納入が3月と遅れたため、4月現在、複数の観測点により雷観測システムの構築には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、雷観測システム(磁場変動観測)と、可視映像観測システムの2つを構築し運用を開始することが目標であった。このうち可視映像観測は順調に設置が完了し、欠測なく映像ファイルが得られている。また、大量に作成される1分間の動画ファイルのうち噴火時のものだけを抜き出し保存する装置を京都大学桜島火山観測所内に設置した。これはwebにアップロードされる気象庁噴火リストを参照し、噴火発生前5分、噴火発生後10分の動画を外付けHDDに保存するものである。これにより可視映像観測システムはほぼメンテナンスフリーとなっている。 雷観測システムは、申請書に記載した検出器1台を用いて火山雷に対する感度チェックを行い、可視映像と比較することで桜島島内に観測点を設置すれば、ほぼ検出漏れがないことを確認できた。しかしながら追加の検出器の納入が遅れ、4月現在、複数の観測点により雷観測システムの構築には至っていない。そのため23年度の目的からはやや遅れている。今後、複数点で磁場変動の到来方向を見積もり、その交点を計算することで雷発生の時刻と水平位置を推定するシステムを早急に構築したい。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に23年度に達成できなかった雷観測システムの構築を急ぐ。その後、新たに地電位差観測を開始する。火口から3~4kmの距離の3観測点(野外)で200Hzサンプリングの地電位差連続観測を行う。臨時地震観測用に開発されたGPS時刻同期機能付低消費電力データロガーを用い、20m電線間の地電位差2成分(南北、東西)を測定する。火山雷観測システムによって計算した電流値を入力、山麓で観測された電位差を出力としてその時間変化を求め、通常では観測が困難な活動火口周辺の比抵抗モニタリングを試みる。 可視映像観測システム、雷観測システム、地電位差観測の3種類の雷観測のデータを安定的に運用し、種々の火山観測データと比較し、その関係性を定量的に明らかにする。得られた関係から、火山雷観測が噴火規模やタイプの推定にどの程度の貢献できるかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地電位差連続観測を行うためのデータロガー、バッテリ、電極、CFカードを購入する。雷観測システムに必要な機材は24年度初頭に納入され、必要な機材はほぼ揃っている。以上の装置を現地に設置するため旅費を使用する。雷観測装置、及び発生の時刻と水平位置を推定する中央演算PCは京都大学桜島観測所のローカルネットワーク内にまず設置する予定であるが、中央演算PCはGPS受信機能がないためPC内部時計が正確でないという問題がある。そのため電波時計を用いて時刻校正を行える安価な機材を購入する。京都大学桜島観測所のローカルネットワークと外部のネットワークの通信は不可能なため、本研究課題の終了時には外部web上にデータを公開できるよう携帯電話等を用いたネットワークに切り替える予定であり、そのための安価な機材を購入する。
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