2013 Fiscal Year Research-status Report
低気圧の多様性に関する高解像領域モデルによる理想化実験
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23740349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳瀬 亘 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (80376540)
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Keywords | 台風 / 温帯低気圧 / メソ低気圧 / 理想化実験 / 領域モデル |
Research Abstract |
前年度に引き続き「熱帯低気圧と温帯低気圧との間のグレーゾーン」のテーマに関する理想化実験を進めた。特に低気圧が発達し難い亜熱帯と比較することで、低気圧が発達しやすい熱帯と温帯の特徴がクリアになってきた。前年度には鉛直シアの影響を調べたが、今年度はそれ以外の要因として、温度の影響もあること、湿度の影響は小さいことを確認した。 また、より信頼できる結果を得るため、実験設定の改良も行った。数値実験は数日もの長さの積分時間で行うため、初期に与えた環境場が変化してしまうという問題がある。そこで、環境場を維持するスキームをモデルに導入した。また、モデルの領域を広げて側面境界の影響を小さくした。初期に与える擾乱も何通りかを試し、実験結果に与える影響を調べた。 メソスケール低気圧の理想化実験で与える環境場を調べるために、日本周辺に発生した事例のサンプルを収集した。また、4th International Summit on Hurricanes and Climate Changeなどの国際会議に参加し、地中海のメソスケール低気圧であるmedicaneや高緯度のメソスケール低気圧であるポーラーロウに関する最新の研究の情報を収集した。 また、理想化実験を検証するために行っている低気圧の現実事例の統計に関する研究の成果を、国内外の学会で発表した。この研究は2014年にアメリカ気象学会のJournal of Climate誌にも掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第1のテーマである「熱帯低気圧と温帯低気圧との間のグレーゾーン」に関しては、すでに研究成果も得られ、また、研究を進めるにつれて新たなテーマも生み出されている。より信頼できる結果を得るための、実験設定の改良や様々な設定での実験も行われている。 本研究の第2のテーマである「多様なメソ低気圧の体系化」に関しては、現実の事例のサンプルを集める所まで完了したが、複雑な問題設定のどこにフォーカスして理想化するかに関しては、慎重に検討する必要があるため、適切な実験設定を考案中である。
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Strategy for Future Research Activity |
第1のテーマである「熱帯低気圧と温帯低気圧との間のグレーゾーン」に関する研究成果を国内外の学会で発表し、関連分野の研究者と議論を行う。また、これらの議論を反映させて論文にまとめ、最終年度に学術誌に投稿する予定である。さらに、これまでの研究を通じて新たなテーマも見つかっているので引き続き内容を発展させて行く。特に北半球と南半球との違いや、太平洋の中での東部と西部の違いなどを比較すること、および、重要な環境場要因に特化してメカニズムを詳細に調べて行くことで、更なる展望が期待出来る。 第2のテーマである「「多様なメソ低気圧の体系化」に関しては、実際の現象の中から本質的なプロセスを取り出して行く。特に、メソ低気圧では環境場自体が数日の時間スケールで変化するため、この点を考慮して実験設定を考案する必要がある。 これまでの経緯を踏まえると、現時点では第1のテーマの方がより研究の発展が見込めるため、第1のテーマを優先的に進めて研究成果を上げて行く予定である。
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Research Products
(3 results)