2014 Fiscal Year Annual Research Report
低気圧の多様性に関する高解像領域モデルによる理想化実験
Project/Area Number |
23740349
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳瀬 亘 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (80376540)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 台風 / 温帯低気圧 / メソ低気圧 / 理想化実験 / 領域モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
台風や温帯低気圧などの様々な低気圧の包括的な理解を目指した本課題では、4年の期間を通して、熱帯・亜熱帯・温帯の環境場における低気圧の発達のしやすさに関して、研究成果を上げることができた。期間の前半では、現実大気における低気圧の気候学的な分布を解析し、低気圧の発達が熱帯と温帯では活発であり亜熱帯では不活発である特徴を確認した上で、その分布が環境場とよく対応していることを定量的に示した。この結果は2014年にアメリカ気象学会のJournal of Climate誌に掲載された。 熱帯・亜熱帯・温帯における低気圧の発達のコントラストをよりクリアに理解するため、期間の後半では、単純化した環境場において低気圧が発達できるかどうかを検証する理想化実験を行った。5つの環境場のパラメータ(東西風・気温・湿度・コリオリパラメータ・海面と大気の温度差)だけを与える理想化実験を行った結果、熱帯の環境場を与えた実験では熱帯低気圧が、温帯の環境場を与えた実験では温帯低気圧が、それぞれ外力なしに発達できることが確認できた。一方で亜熱帯の環境場を与えた実験では、いずれのタイプの低気圧も発達できないことも実証された。環境場のパラメータの効果を個々に切り分ける感度実験を行なったところ、亜熱帯の環境場は、熱帯低気圧にとっては温度が低く東西風の鉛直シアが強いために発達が難しく、温帯低気圧にとっては鉛直シアとコリオリパラメータが小さいことで発達が難しいことが明らかになった。また、熱帯~温帯の30地点もの環境場を与えた実験を行なうことで、この結果が十分に信頼できることも確かめられた。この研究は国内外の学会で多くの研究者から助言をもらうことで改良を進め、最終年度にアメリカ気象学会のJournal of Atmospheric Science誌に投稿した(現在、minor revisionの査読結果を受け、改稿中)。
|
Research Products
(9 results)