2011 Fiscal Year Research-status Report
磁気嵐時におけるグローバル地磁気変動と電離圏擾乱ダイナモに関する研究
Project/Area Number |
23740369
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新堀 淳樹 京都大学, 生存圏研究所, 特定研究員 (30555678)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 磁気嵐 / 赤道ジェット電流 / 電離圏擾乱ダイナモ / 熱圏風 / 対流電場 / 遮蔽電場 / 地磁気日変化 / 太陽風 |
Research Abstract |
これまでの研究結果から、磁気嵐の主相時において、太陽風磁場(IMF)が南向きに伴って強められた朝夕方向の対流電場が極域電離圏から磁気赤道域へ伝播し、その電場が東向きの赤道ジェット電流を強化することが知られている。一方、IMFの北転に伴って急激に対流電場が弱められることで、内部磁気圏に発達した非対称環電流に接続する領域2型の電流系の作る遮蔽電場が相対的に強くなり、赤道域で東向きの赤道ジェット電流を弱めることがわかっている。そして、この回復期には、同時に磁気嵐時における極域の熱圏大気加熱を原因とした熱圏風が駆動され、それが極域から赤道域に吹くことによって電離大気と中性大気との相互作用によって領域2型の電流系とは別の電流系が発達する。しかしながら、中緯度を含めたグローバルな地磁気観測データ解析が十分に行われておらず、また、磁気嵐時における熱圏大気変動の実態も観測的に実証されていないため、赤道域の磁場変動に関して両者の効果がどの程度であるかの切り分けができていない。 そこで、本研究では、磁気嵐時における高緯度から磁気赤道に至るまでのグローバルな磁場変動の解析を2002年5月23日に発生した磁気嵐イベントに対して行った。その結果、磁気嵐の主相時に置いて、極冠域から中緯度領域にかけて2セル型の電離圏対流が作る電流系が支配的となり、昼間側の赤道域では、東向きのジェット電流が強められていた。一方、磁気嵐の回復期初期において、極冠域では、4セル型の対流パターンを、中緯度域では、領域2型の電流系の作る対流パターンを示した。その時、昼間側の赤道ジェット電流は、その電流系の作る電場によって弱められていた。その後、回復期後期において、領域2型の電流系の作る対流パターンは消失し、赤道域-中緯度を時計周りの方向に流れる反Sq場の電流系が卓越していることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の平成23年度での研究実施計画では、磁気嵐時における高緯度から磁気赤道に至るまでのグローバルな磁場変動の事例解析を行うことであったが、大学間連携プロジェクトの進行がよく、データ解析環境がより一層充実となり、短期間にデータの検索や収集が容易にできるようになった。そのため、グローバルな地磁気データ解析が順調に進み、複数の磁気嵐イベントの統計解析まで行うことが可能となった。その結果、磁気嵐を駆動する太陽風擾乱の性質(CMEまたはCIR起源)によって、磁気赤道における地磁気変動の仕方に違いが見られることを統計的に示すことができた。 一方、磁気嵐時の電離圏擾乱ダイナモの起源となる中間圏・熱圏風の変動が高緯度を起源とすることを示すために、高緯度と赤道との間を結ぶ中緯度と低緯度に位置した稚内と山川のMFレーダーで観測された風速データをNICTから入手することができた。これによって、両極から赤道までの磁気嵐におけるグローバルな中間圏・下部熱圏の中性風変動を解析する環境が整うまでに至った。 したがって、これらは、平成24年度に行う計画の一部をなしており、当初の計画以上に本研究課題は進んでいるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、昨年度に得られた結果を拡張するために、長期のデータセットを用いて、これまでよりも多くの磁気嵐イベントについて解析を行い、磁気嵐の主相と回復相におけるグローバルな地磁気変動の統計的描像を確立する。この統計解析では、少なくとも磁気嵐の回復相に出現する赤道域の西向きジェット電流の起源に関して領域2型沿磁力線電流系のものと電離圏擾乱ダイナモによる成分との分離を試みることを考案している。そして、両者の時間スケールを明らかにすることを目標とする。 また、磁気嵐時の電離圏擾乱ダイナモの起源となる中間圏・熱圏風の変動の時間・空間変動を捉えるために、高緯度から赤道域に位置した複数の流星レーダー(スバルバール、コトタバン、ビアク)、MFレーダー(昭和基地、ロゼラート基地、アンデネス、パムンプク、ポンティアナ、山川、稚内)の風速データの解析を行う。 さらに、本研究課題の中間報告として、磁気嵐時におけるグローバルな地磁気変動についての事例解析と統計解析の結果を述べた2つの学術論文にまとめ、結果を公表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本研究課題の中間報告として、磁気嵐時におけるグローバルな地磁気変動についての事例解析と統計解析の結果を公表していくため、日本国内で行われる学会や研究集会(日本地球惑星連合大会2012:開催地=千葉幕張、地球電磁気・惑星圏学会:開催地=北海道札幌など)、及び国際会議(米国地球物理学連合学会など)に参加するための予稿・参加登録料や旅費について本研究費が使用される予定である。また、これらの研究成果を学術雑誌論文にまとめるため、それに関わる英語校閲費や論文出版費用も本研究費でまかなうことを予定している。 また、これまでよりも多量のデータを解析する環境の整備も順次行っていくため、物品費として、データ記憶媒体(ハードディスク、DVDなどのメディア)、データ解析ルーチンの維持費(IDLライセンス使用料)等にも使用される。
|
Research Products
(25 results)
-
[Journal Article] Solar zenith angle dependence of plasma density and temperature in the polar cap ionosphere and low-altitude magnetosphere during geomagnetically quiet periods at solar maximum2011
Author(s)
Kitamura, N., Y. Ogawa, Y. Nishimura, N., Terada, T. Ono, A. Shinbori, A. Kumamoto, V. Truhlik, J. Smilauer
-
Journal Title
Journal of Geophysical Research
Volume: VOL116
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] DSpaceを用いた超高層物理学のためのメタデータ・データベースの構築2011
Author(s)
河野貴久, 小山幸伸, 堀智昭, 阿部修司, 吉田大紀, 林寛生, 新堀淳樹, 田中良昌, 鍵谷将人, 金田直樹, 田所裕康
-
Journal Title
第3回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム論文集
Volume: 3巻
Pages: -
Peer Reviewed
-
[Journal Article] 大学間連携プロジェクト「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究」2011
Author(s)
林寛生, 小山幸伸, 堀智昭, 田中良昌, 新堀淳樹, 鍵谷将人, 阿部修司, 河野貴久, 吉田大紀, 上野悟, 金田直樹, 米田瑞生, 田所裕康,元場哲郎
-
Journal Title
宇宙科学情報解析論文誌
Volume: 1巻
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
[Journal Article] 超高層物理学分野の為のメタデータ・データベースの開発2011
Author(s)
小山幸伸, 河野貴久, 堀智昭, 阿部修司, 吉田大紀, 林寛生, 田中良昌, 新堀淳樹, 上野悟, 金田直樹, 米田瑞生, 元場哲郎, 鍵谷将人, 田所裕康
-
Journal Title
宇宙科学情報解析論文誌
Volume: 1巻
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
[Journal Article] IUGONET共通メタデータフォーマットの策定とメタデータ登録管理システムの開発2011
Author(s)
堀智昭, 鍵谷将人, 田中良昌, 林寛生, 上野悟, 吉田大紀, 阿部修司, 小山幸伸, 河野貴久, 金田直樹, 新堀淳樹, 田所裕康, 米田瑞生
-
Journal Title
宇宙科学情報解析論文誌
Volume: 1巻
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
[Journal Article] IUGONET解析ソフトウェアの開発", 宇宙科学情報解析論文誌2011
Author(s)
田中良昌, 新堀淳樹, 鍵谷将人, 堀智昭, 阿部修司, 小山幸伸, 林寛生, 吉田大紀, 河野貴久, 上野悟, 金田直樹, 米田瑞生, 田所裕康, 元場哲郎, 三好由純, 関華奈子, 宮下幸長, 瀬川朋紀, 小川泰信
-
Journal Title
宇宙科学情報解析論文誌
Volume: 1巻
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] Anomalous Enhancement of Occurrence of the Preliminary Impulse of Geomagnetic Sudden Commencement (SC) at Low Latitude in the South Atlantic Anomaly (SAA) region2012
Author(s)
Shinbori A., Y. Nishimura, Y. Tsuji, T. Kikuchi, T. Araki, A. Ikeda, T. Uozumi, R. Otadoy, H. Utada, J. Ishitsuka, N. Trivedi, S. Dutra, N. Schuch, S. Watari, T. Nagatsuma, K. Yumoto
Organizer
International GEMSIS workshop
Place of Presentation
名古屋大学 (愛知県)
Year and Date
2012年3月12日
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Seasonal dependence of geomagnetic field variations on the ground associated with geomagnetic sudden commencements2011
Author(s)
Shinbori, A., Y. Tsuji, T. Kikuchi, T. Araki, A. Ikeda, T. Uozumi, S. I. Solovyev, B. M. Shevtsov, R. E. S. Otadoy, H. Utada, T. Nagatsuma, H. Hayashi, K. Yumoto, IUGONET project team
Organizer
XXV IUGG General Assembly
Place of Presentation
Melbourne, Australia
Year and Date
2011年7月6日
-
-
-
[Presentation] 高緯度から磁気赤道域における磁気急始(SC)の磁場振幅の季節依存性について2011
Author(s)
新堀淳樹, 辻 裕司, 菊池 崇, 荒木 徹, 池田 昭大, 魚住 禎司, S. I. Solovyev, Boris M. Shevtsov, Roland Emerito S. Otadoy, 歌田 久司, 長妻 努, 湯元 清文, IUGONETプロジェクトチーム
Organizer
日本惑星科学連合2011年大会
Place of Presentation
幕張メッセ (千葉県)
Year and Date
2011年5月26日
-
-
[Presentation] 高緯度から磁気赤道域までの磁気急始 (SC) の磁場振幅の季節変化の緯度依存性2011
Author(s)
新堀淳樹, 辻裕司, 菊池崇, 荒木徹, 池田昭大, 魚住禎司, Baishev Dmitry, Shevtsov Boris M., Otadoy Roland E. S., 歌田久司, 長妻努, 湯元清文, IUGONETプロジェクトチーム
Organizer
地球電磁気・地球惑星圏学会 第130回講演会
Place of Presentation
神戸大学 (兵庫県)
Year and Date
2011年11月5日
-
-
[Presentation] 磁気嵐時におけるグローバルな地磁気変動と電離圏擾乱ダイナモについて2011
Author(s)
新堀淳樹, 田中良昌, 辻裕司, 菊池崇, 小山幸伸, 林寛生, 冨川喜弘, 長妻努, 堤雅基, Dennis M. Riggin, Dave C. Fritts, Peter Hoffmann, IUGONETプロジェクトチーム
Organizer
第2回極域科学シンポジウム・第35回極域宙空圏シンポジウム
Place of Presentation
国立極地研究所 (東京都)
Year and Date
2011年11月15日
-