2011 Fiscal Year Research-status Report
高速磁気リコネクションにおける3次元磁気拡散機構の理論的解明
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23740373
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤本 桂三 独立行政法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 基礎科学特別研究員 (90553800)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 無衝突磁気リコネクション / 波動粒子相互作用 / 磁気拡散機構 / 粒子シミュレーション / 適合細分化格子(AMR) |
Research Abstract |
本研究は、磁気リコネクションの大規模な3次元電磁粒子シミュレーションを実施することによって、高速磁気リコネクションを可能にする3次元的な磁気拡散機構を解明することを目的としている。効率的な粒子シミュレーションを実現するため、従来の粒子法(Particle-In-Cell(PIC)法)に適合細分化格子(Adaptive Mesh Refinement(AMR))を適用した独自の計算コード(AMR-PICコード)を用いた。イオン(陽子)と電子の質量比を100として大規模な3次元シミュレーションを実施した結果、高速磁気リコネクションにともなって磁気X線近傍に電子電流層をキンクさせるような電磁波動が励起することが明らかになった。線形波動解析の結果、このモードは従来考えられていたようなイオン-電子の相対運動によって駆動されるドリフトモードではなく、空間的な速度シアによって駆動される新しいタイプのモードであることがわかった。重要な点は、この電磁波動によって電子運動量の異常輸送が発生し磁気拡散が生じることである。とりわけ、プラズモイドの放出にともなって異常輸送効果が強化されることが明らかになった。これは、プラズモイドが発生する際に局所的に速度シアが増加し、電磁波動の振幅が増幅されるためであると考えられる。本研究は、3次元リコネクションにおいてシア駆動不安定性による電磁波動が磁気拡散過程において重要な役割を果たすことをシミュレーションによって初めて実証したという点で非常に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、高速磁気リコネクションを可能にする3次元的な磁気拡散機構を解明することである。2次元リコネクション過程では、電子が磁気拡散領域で有限時間の加速を受けることによって生じる運動量輸送効果が磁気拡散を与えていた。これに対して、本年度の研究から、3次元リコネクションにともなう磁気拡散過程では、2次元的な運動量輸送効果だけではなく、シア駆動型の不安定波動による3次元的な異常輸送効果が重要な役割を担っていることが実証された。このことから、本研究の目的はほぼ達成されたといえる。しかしながら、本研究において見出されたシア駆動型不安定性の性質は、未だ完全には理解されていない。とりわけ、イオンと電子の運動がどのようにカップリングしているのかが未解明である。線形波動解析の初期結果から、不安定波動のスケールがイオンと電子の質量比に大きく依存していることがわかっているため、両者が何らかの相互作用をしていることは明らかである。今後は、より詳細な波動解析を実施し、その性質を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、磁気リコネクションにともなう磁気拡散過程において重要な役割を担うことが明らかになったシア駆動型不安定性の詳細な性質を解明する。これまでに実施した線形波動解析から、不安定波動のスケールがイオンと電子の質量比に大きく依存していることがわかっている。このことから、両者が何らかの相互作用をしていることは明らかである。今後は、より詳細な線形解析を実施することにより、このモードの性質を明らかにする。例えば、磁気リコネクション過程ではイオンも電子も速度シアをもっているため両者の寄与を分離して議論することが困難であった。今後は、イオンもしくは電子だけが速度シアをもつような電流層に対して線形解析を実施し、それぞれが果たす役割を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究はほぼ当初の計画通りに進んだが、研究成果を論文にまとめ出版するまでには至らなかった。そのため、今年度に論文出版費として計上していた額を次年度に繰り越すこととなった。 繰越分も含めた次年度の研究費は、主に、今年度に実施した研究成果を国内外で発表するための学会参加旅費や論文出版費に充てる予定である。具体的には、国内出張3回、海外出張1回、国際誌への論文2本の出版を考えている。
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