2011 Fiscal Year Research-status Report
複数観測データを融合した太陽風擾乱伝搬のシミュレーション
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23740374
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
垰 千尋 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (80552562)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 太陽風 / データ同化 / 内部太陽圏 |
Research Abstract |
当該年度は、太陽風3次元磁気流体シミュレーションモデルへ惑星間シンチレーション(IPS)観測データをデータ同化する手法を新たに確立した。観測された太陽風速度の情報をシミュレーションに反映(データ同化)することで、観測を反映した擾乱構造やその伝搬をシミュレーション空間内で解析・調査したり、惑星位置における太陽風パラメータ予測の精度向上が期待される。本研究では、データ同化の過程で、流源関数を修正する手法を新たに組み込んだ。流源関数は、内側境界において磁場と太陽風速度・密度・温度を関連付ける関係式であり、加速・加熱過程を反映するものと考えられる。これまで統計的に導出された経験モデルが用いられてきたが、この関数から得られる太陽風密度が近年過大評価となる変化をしていることが太陽風観測から示唆されている。本研究では、磁場と太陽風速度を関連付ける関数を可変とした。 太陽風3次元磁気流体シミュレーションモデルによって、50太陽半径から地球近傍までの太陽風伝搬を解く。データ同化手法としてアンサンブルカルマンフィルターを用いた。観測データは、電波源とを結ぶ視線方向の重みづけした積算値を見ている。このジオメトリ効果を考慮して、観測ジオメトリとシミュレーション空間を対応付ける変換行列を導出した。 データ同化法の評価(双子実験)を行った:これは、ある設定のもとでシミュレーションモデルを行って"擬似観測データ"および"期待される解"を作成しておき、その設定を"知らない"別のモデル計算に疑似観測データをデータ同化し、"期待される解"がどれくらいの精度で得られるか、を評価するものである。地球位置の太陽風速度変動と内側流源関数の係数について、設定した"期待される解"を再現することが確認された。データ点数が多いほど"期待される解"に近づくが、データ位置の偏りは、大きな構造形成には影響が小さいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ同化手法を確立することができ、さらに、双子実験を行って、手法の評価を行うことができた。実際の観測データを用いたテストを現在実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、i)現在の流源関数のモデル関係式の他、密度・温度と速度の経験モデル関係式を変数とする方がよいのかの検討、ii)実際のIPS観測データをモデルへデータ同化し、流源関数係数の特長を調査、iii)探査機による"その場"観測データやコロナグラフの利用へと拡張、iv)実際の地球近傍の太陽風観測で太陽風予測について評価、を行っていく。 i)データ同化による内側流源関数の制限において、制限する係数の選択やモデル関数等、自由度が非常に大きい。太陽近傍の太陽風加速・加熱の理論研究からの関数の絞り込みの検討を行う。 iii)として、ステレオ衛星その場観測データ、コロナグラフによる太陽風およびコロナ質量噴出の速度・密度情報、太陽風プラズマや磁場のその場観測、ひので衛星等のデータを順に組み込む。前年度と同様の手順でデータ同化および評価を行う。観測が複数になっても、観測量とシミュレーション変数を(観測座標および変数について)対応付ける状態変数空間の書き換えで、対処可能である。 iv)として、データ同化の有無による、地球近傍の太陽風パラメータがどの程度変わり、観測の再現性がどう変わるかを調査する。観測データ点数や太陽活動度によって、データ同化の有無の違いや再現性が変わるかを明らかにする。データ同化によって求まる内側流源関数の係数の値について、太陽活動度の依存性等を明らかにする。i)で検討した太陽風加速・加熱理論との関連を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<研究打ち合わせ旅費35万円>打ち合わせのための国内旅費(神奈川⇔名古屋、神奈川⇔東京。交通費の他、前者は加えて1~2泊程度の滞在費を想定)が必要である。さらに、データ同化に利用する太陽・太陽風観測データを広げるため、米国計測・観測器開発グループとの打ち合わせを行う(国外旅費、神奈川⇔米国、~1週間)。<研究成果発表旅費30万円>国内外の学会等(JpGU、COSPAR など: 神奈川⇔千葉、神奈川⇔インド)での成果公表を予定している。<論文10万円>学術誌へ論文を投稿する。<文献・物品・消耗品5万円>太陽近傍物理関連の参考書籍およびデータ保存媒体を購入する。 昨年度の未使用分約11万円を、海外における研究打ち合わせ旅費および研究成果発表費用に充てている。
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