2011 Fiscal Year Research-status Report
電子求引基を有するアルキル鎖のβ位におけるメチレン基酸化法の開発
Project/Area Number |
23750043
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上野 聡 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50514139)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 1,3-ジケトン / 酸化 / カルボニル化合物 / 遷移金属錯体 / アルキルケトン / 活性メチレン化合物 |
Research Abstract |
本研究では、アルキルケトンのβ位のメチレン基を酸化することで、カルボニル基に変換する反応の開発を目指している。本年度は、ブチルケトンとアミンについて、触媒量の酢酸パラジウム存在下、酢酸アリルと炭酸セシウムを用い、反応させることでβ位でアミノ化されたα,β-不飽和ケトンが得られることを見出した。しかし、この反応では、不安定なゼロ価パラジウムの失活が問題となり、反応が途中で止まってしまっていた。そこで、パラジウム触媒の失活を防ぐための配位子のスクリーニングを行った。本触媒反応では、β-水素脱離の段階がふくまれているため、強く配位しすぎると目的の反応が進行しなくなることが考えられるので、その調節は困難である。さまざまなリンやアミン、アルケンなどの配位子について検討を行ったところ、N,N'-ジメチルプロパンジアミンを配位子に用いた時、目的の反応が効率よく進行し、高収率でβ-エナミノンが得られた。ところで、このβ-エナミノンは、酸水溶液を添加することで、容易に加水分解され、1,3-ジケトンへ変換されることが分かった。この一連の分子変換は、ワンポットで操作することができ、アルキルケトンから1,3-ジケトンへ収率79%で変換されることが分かった。また、前述のアルキルケトンとアミンからβ-エナミノンを与える反応について、より高活性な触媒の開発を行ったところ、触媒としてロジウム触媒を用いたときに、反応温度を40度まで下げることが可能であり、20時間後にNMR収率78%で目的のβ-エナミノンを与えることが分かった。この分子変換については、鎖状の飽和ケトンを脱水素化することができる触媒条件として活用し、アルキルケトンから1,3-ジケトンへのより広範で温和な酸化反応として展開していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度計画していたとおり、アルキルケトンとアミンからβ-エナミノンを調製する触媒反応を開発し、それを系中でワンポットで加水分解することにより、1,3-ジケトンへ変換するという分子変換を開発することができた。現時点で最高収率78%であり、もう少し改善の余地があるが、おおむね達成できたと考えている。また、本反応では、反応温度を100度で加熱する必要があったが、上述のようにロジウム触媒を用いることで40度まで下げることが可能となった。これは、本研究課題で計画していた以上の進展であった。この知見を活かすことで、残りの研究期間内で更なる分子変換を開発して行きたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究計画は、当初の予定を上回るペースで進展している。そのため、当初の研究計画に基づいて研究を進めていく。特に、前年度との違いとしては、求核剤として、モルホリン以外の二級アミンや一級アミンや芳香族アミンなど様々なアミンを検討していくことで、更に効率よくβ-エナミノンを与える反応条件を開発する。さらに、様々な求核剤の検討を通して得られた知見をもとにして、求核剤として水を直接用いる反応条件の開発を行う。さらに、ケトン以外に、飽和なエステルや飽和なニトリルを基質として用いることで、β-ケトエステルやβ-ケトニトリルを得る事ができるとも考えられる。それらも1,3-ジケトンと同様に活性メチレン化合物として有機合成化学においては、重要な活性メチレン化合物であるので、基質適用範囲の拡大も考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に得られた上述の研究結果は、従来まで不可能とされてきた非環状ケトンの直接的脱水素化反応である。そのため、有機金属化学の触媒反応としても極めて興味深い結果である。そこで、これらの実験結果を国内および国外で講演したり、論文発表を行うための費用(旅費や学会参加費、論文別刷など)として使用する。また、今後の研究の進め方に記入したように、さまざまなアミンを求核剤として用いるために、種々のアミンを購入する。また基質適用範囲の拡大も考えているので、飽和なエステルや飽和なニトリル類を購入するための費用に充てる。
|
Research Products
(8 results)