2012 Fiscal Year Research-status Report
電子求引基を有するアルキル鎖のβ位におけるメチレン基酸化法の開発
Project/Area Number |
23750043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上野 聡 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50514139)
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Keywords | パラジウム触媒 / ニッケル触媒 / 飽和ケトン / ピロリジン / β-エナミノン / ワンポット変換 / エナミン / δ-ジエナミノン |
Research Abstract |
本研究は、アルキルケトンのβ位のメチレン基を酸化することで、カルボニル基に変換する反応の開発を目指している。昨年度は、ブチルケトンとモルホリンとを、触媒量の酢酸パラジウムおよびN,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミンの存在下、酢酸アリルと炭酸セシウムを用いて反応させることで、β位でアミノ化されたα,β-不飽和ケトンが高収率で得られることを見出した。さらに、反応後の溶液に希塩酸を加えることで、室温10分でエナミン部位が完全に加水分解され、1,3-ジケトンへワンポットで変換されることを見出した。このワンポットでの飽和ケトンのβ位酸化反応について、基質適用範囲の拡大を試みたところ、ほとんどの基質について収率が40%程度まで低下してしまった。そこで、β-アミノ化の反応条件を更に改善することにした。そこで、モルホリン以外に様々なアミンの検討を行った。すると、ピロリジンを用いた時に、収率が大幅に改善し、高収率でβ-エナミノンが得られた。このピロリジンを求核剤として用いる反応条件では、ほとんどの基質において目的生成物が高収率で得られた。 また、この反応の研究途上、ニッケル–トリメチルホスフィン触媒を用い、求核剤としてエナミンを用いた場合、エチルケトンがδ-ジエナミノンに変換されることを見出した。この分子変換反応も、飽和ケトンのβ位酸化反応に相当する。この反応は、様々なエチルケトンとエナミンに適用でき、高収率で対応するδ-ジエナミノンが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請書や交付申請書に記載した研究計画はすべて問題なく進行される。当初計画していた成果とほぼ同様の進行状況である。特に、本年度、求核剤をモルホリンからピロリジンに代えることで、全体の収率が大幅に向上することを見出した。また、本研究課題遂行中に、求核剤としてエナミンを用いるb位の酸化手法を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アルキルケトンとピロリジンとを、パラジウム触媒存在下、酢酸アリルおよび炭酸セシウムを共存させて反応を実施することで、β-エナミノンが生成し、それをワンポットで希塩酸で加水分解することで、1,3-ジケトンへ効率よく変換できることを見出した。今年度は、この反応について、求核剤として水を用いることで、加水分解などの操作をせずに、アルキルケトンから直接1,3-ジケトンへ変換する手法を開発する。また、上で述べたように、求核剤としてエナミンをもちいることによる、新たなβ位酸化手法も見つかったので、これについても同様に研究を奨め、よりインパクトのあるβ位酸化手法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、飽和ケトンとアミンとの反応によるβ-エナミノンの形成とワンポットでの加水分解を経る1,3-ジケトンの合成を目指して研究を行った。結果的に、アミンとしてピロリジンを用いることで収率が大幅に改善することを初期の段階で発見することができ、当初予定していたよりも経費を削減することができた。また、別に求核剤としてエナミンを用いることで、δ-ジエナミノンを効率よく得ることができることも見出している。次年度は、これらの研究成果を、より多くの学会で発表するための旅費や学会参加費に充てる予定である。
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Research Products
(13 results)