2013 Fiscal Year Annual Research Report
希土類-遷移金属複合錯体における単分子磁石挙動の系統的理解とその発展的改良
Project/Area Number |
23750056
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡澤 厚 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (30568275)
|
Keywords | 磁性 / 分子性固体 / 単分子磁石 / 低温物性 / 4f-3d系 |
Research Abstract |
本研究課題では、究極的な分子サイズメモリの候補であり、量子効果の観点からも興味の持たれている「単分子磁石」について、系統的な化学修飾による化合物群の開発とその物性評価・化学的傾向の理解を進めてきた。 前年度同様に、希土類(4fスピン)―遷移金属(3dスピン)錯体に関する磁気的相互作用(交換相互作用)を、高磁場・高周波数電子スピン共鳴測定法と各種磁気測定により明らかにしてきた。メチルイミダゾール配位した新規な[DyNiDy]型三核錯体は、その詳細な結晶構造の解析から、Dy配位環境がこれまでの類似化合物と比較して、八配位捩れ四角柱型配位構造から八配位十二面体型へと僅かに歪んでおり、この違いが性能向上に関係したと示唆される。 また、[LnNiLn]型錯体(Ln = Gd, Tb, Dy, Ho)において、Ln―Ni間交換相互作用の化学的傾向を明らかにし、Dyの異常性について議論を試みた。結晶構造の詳細から、Dy錯体のみオキシム配位子周りの配位結合距離に有意な違いが見られ、その結果Dy―Ni間の超交換相互作用に違いが生じたと考えられる。これにより、今まで希土類―遷移金属イオン間の相互作用は、3dスピンが空の5d軌道へ電子移動した励起状態を介したものとして説明されてきたが、3d―4f電子遷移の状態も軌道間の重なり次第では重要であることが明らかとなった。 光応答性単分子磁石開発については、光異性化部位を導入したキレート配位子の一つについて合成に成功し、別の光異性化部位の導入は最終段階まで到達した。錯形成が今後の課題である。
|