2011 Fiscal Year Research-status Report
金属イオン検出を新たな次元とする多次元PAGEによるメタロタンパク質分析法の開発
Project/Area Number |
23750077
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60343018)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メタロタンパク質 / 金属蛍光プローブ / ポリアクリルアミドゲル電気泳動 / スペシエーション |
Research Abstract |
金属イオンPAGEに用いる新規蛍光プローブを合成し,計8種のプローブを整備した。その内、芳香族8座非環状ポリアミノカルボン酸を用いてFe(III)の検出に、芳香族8座大環状ポリアミノカルボン酸を用いてCu(II)の分離検出に成功した。検出限界はCCDカメラを用いて数十pptであった。 一次元目のタンパク質分離においては、ブルーネイティブ(BN)-PAGEを用いた。その結果、使用する泳動溶液およびゲル中に数十ppbレベル以上の汚染金属イオンが存在することが明らかとなった。つまり、タンパク質は汚染金属イオンと錯形成と解離を繰り返しながら泳動していることになり、金属検出の結果は本来の試料組成を反映していない可能性が高い。そこで、モノマーおよび緩衝剤溶液にキレート試薬を添加し、その後、電圧を印加してコンディショニングを行った。この時、ゲルおよび泳動液中では汚染金属は速度論的に安定な陰イオン性および陽イオン性キレートを生成するように設定した。コンディショニングにより,ゲル中の汚染金属はスイープされ、さらに上層泳動液中の汚染はカソード方向へ泳動するため、分離ゲルは汚染の無い状態になる。この新しいPAGEによって分離場の汚染金属は数十ppt以下に抑えられることが明らかとなった。この方法をヒト血清試料に用いタンパク質-銅イオンのマップ化を行ったところ、バックグラウンドシグナルが無い状態で、幾つかのタンパク質から銅イオンを検出することに成功した。また、本研究の波及効果として、希土類金属イオンの分離検出に適したキャピラリー電気泳動用蛍光プローブを見出し、燃焼率計測のために測定ニーズのある使用済み核燃料中のNdイオンの超高感度検出法を確立した(S. Saito et al., J. Chromatogr. A, Vol. 1232, pp. 152-1587 (2012).)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と比べ、金属イオンを高感度検出するPAGEおよび新しい汚染金属を抑制したタンパク質分離PAGEを開発することにより,より正確なタンパク質-銅二次元マップを作製することに成功している。従って、計画通りに研究は進んでいると考える。特に、汚染金属の問題を評価し、実際に汚染を抑制したタンパク質の分離技術は世界的にも報告されておらず、価値の高いものと考える。 ただし、当初の目的と比べ、マップ化できた金属が現在のところ銅イオンだけであることは、計画から若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、タンパク質‐金属イオンマップの検出金属をFe,Zn等に拡張することを考えている。そのために、23年度に整備した8種類のプローブを用いて様々な金属イオンの分離検出を試みる。さらに、ヒト血清中で発見されたCu結合タンパク質の同定を行い、Cuイオンの分布に関しての論文化を進める。加えて、タンパク質からの金属イオンの解離反応を制御したPAGEの泳動条件をさらに調査し、ネイティブおよび尿素PAGEへと拡張し、多次元化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に実験用の消耗品(電気泳動装置備品、タンパク質、合成原料等)に使用する予定である。また、学会への旅費にも使用する予定である。
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Research Products
(13 results)