2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間情報伝達物質の蛍光イメージングを可能にする機能性核酸センサーの開発
Project/Area Number |
23750194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野中 洋 九州大学, 学内共同利用施設等, その他 (80579269)
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Keywords | 機能性核酸 / アプタマー / 細胞間情報伝達物質 / アデニンヌクレオチド / センサー / 蛍光イメージング |
Research Abstract |
本研究の目的は、細胞膜上で行われる細胞間情報伝達物質の放出を分子レベルで可視化・解析するために、伝達物質の蛍光センシングが可能な核酸アプタマーセンサーを開発することである。細胞間で行われる伝達物質放出現象は生体において極めて重要な役割を担っている。この細胞間における情報伝達物質の放出・拡散過程は詳細にはわかっておらず、伝達物質の動態を分子レベルで可視化・解析することができれば未知の部分が多い細胞間情報伝達物質の作用の理解につながると考えられる。本研究では、核酸アプタマーセンサーを開発し、これまで困難であった細胞間情報伝達物質の分子レベルでの動態解析に挑戦している。昨年度は、アデニンヌクレオチド(Ade)アプタマーセンサーを用い、中枢神経系に存在するグリア細胞(アストロサイト)より、機械的刺激を受けた際に放出・拡散されるAdeの蛍光イメージングをおこなった。本年度は、機械的な刺激をうけたアストロサイトから観測されたAde放出が周囲の細胞に与える影響の同時観測についても検討をおこなった。アストロサイト表層にアプタマーセンサー(緑色)をアンカリングした後に、カルシウムイオン蛍光プローブ(赤色)を細胞内に導入した。その細胞に、機械的刺激を与えるとAdeの放出に同調するように細胞内のカルシウムイオンが増大していく様子が観察された。系時的な変化を解析すると、アプタマーセンサーの蛍光増強は素早くおこり、それ以降は数十秒にわたりゆっくりと減少していくことがわかった。同様にカルシウムイオンの増大も数十秒にわたって同調して起こっていた。通常の神経伝達物質では、秒やミリ秒といったタイムスケールで放出される。今回観測されたAde放出は数十秒にも渡る長時間の放出挙動を示す。これにより、Adeが通常の伝達物質とは異なり、周辺の細胞を長期的に活性化するような役割を担っていることが示唆された。
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