2011 Fiscal Year Research-status Report
イオン化ポテンシャルを制御したシロール誘導体を添加した塗布型有機撮像素子
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23750206
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福田 武司 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40509121)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 塗布型有機撮像素子 / シロール誘導体 / 有機光電変換素子 |
Research Abstract |
塗布型有機撮像素子を実現するために重要な波長選択型有機光電変換素子の特性向上を検討した。特にシロール誘導体の凝集性の高さに着目して、シロール誘導体を添加した光電変換素子のバルクヘテロジャンクション構造を利用した高効率化を検討した。今年度は新たに5種類のシロール誘導体を合成して、イオン化ポテンシャルや吸収スペクトル、光電変換素子への添加効果等を評価した。シロール誘導体にカルバゾール基やフェニル基などを導入することで、イオン化ポテンシャルは5.50eVから6.30eVの範囲で制御可能となった。また、シロール誘導体単層膜では青から紫外波長域のみで吸収があるだけであり、青色に選択的に感度を有する有機光電変換素子の添加剤として利用可能であることを見出した。素子特性評価では、Poly(dioctylfluorenyl-co-benzo-thiadiazole) (F8BT)への添加効果を評価した。その結果、シロール誘導体のイオン化ポテンシャルと素子特性の間には明確な相関関係が得られ、イオン化ポテンシャルが大きいほど素子の外部量子効率やS/Nが向上する傾向が得られた。この結果は、F8BTに光照射した励起子が効率的にキャリア分離したことを示しており、光励起で生成した正孔がシロール誘導体へ移動したことが素子特性向上の大きな理由であると考えられる。また、シロール誘導体の添加濃度などの素子作製条件を最適化することで、外部量子効率52%、S/N10000を実現した。次年度は緑や赤色に選択的に感度を有する有機光電変換素子に対して、シロール誘導体の添加を行い、3原色の全ての素子で高効率化を実現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
青色の光電変換素子だけではあるが、当初の目標であった素子の光電変換効率10%以上は既に実現した。緑や赤色の素子に関しても同様の素子特性改善が期待できる実験結果も得られていることから、当初の予定よりも早くプロジェクトの目標は達成できる見込みである。当初の予定通り二年目に実施する予定であったフェムト秒ポンププローブ法を利用して有機光電変換素子中のキャリアダイナミクスの詳細評価を行うことで、より物理的な解釈を加えていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見を元にシロール誘導体を合成・評価していく。シロール誘導体の合成手順はほぼ確立しているので、高純度に精製した材料合成を適宜進めて行く。また、シロール誘導体の凝集性には原理力顕微鏡を用いて評価する。通常の素子特性だけでは十分に理解できなかったシロール誘導体の凝集性が素子特性に与える影響も合わせて検討していく。フェムト秒ポンププローブ法も予備実験を行って、素子特性と有機層中のキャリア分離効率で相関関係が得られるところまでは実験が進んでいる。今後は評価するシロール誘導体の種類を増やして各種シロール誘導体が有機薄膜中でどういった構造を形成して、その結果キャリア分離効率が変化するかを評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は主に有機光電変換素子作製に必要な消耗品(有機材料、ITO付きガラス基板、溶媒など)を中心に研究費を使用する。また、初年度購入できなかったスピンコーターも導入して、研究の効率化を図る。
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