2012 Fiscal Year Annual Research Report
無容器法によるイオン性高屈折率ガラスの合成と構造学的拡張ガラス形成則の確立
Project/Area Number |
23750236
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増野 敦信 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (00378879)
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Keywords | 光学特性 / 酸化物ガラス / ガス浮遊炉 / 電子分極率 / レンズ / X線回折 / 中性子回折 / ラマン散乱 |
Research Abstract |
本研究では,無容器法によってTiO2,Nb2O5,Ta2O5,WO3,La2O3などこれまでガラス化しないとされていた酸化物を主成分としたガラスを合成し,その光学特性の評価と構造解析を行った.これらのガラスは極めて高い屈折率,そして小さい波長依存性を示し,光学レンズ材料としての応用が期待される.とくにNb2O5系は比較的ガラス化範囲が広いことが明らかとなり,組成によって幅広く物性を制御できることを示すことができた.例えば,La2O3-Nb2O5-Al2O3三元系では,高い熱的安定性を示す組成が見出された.また,La2O3-Nb2O5-Ta2O5系では,Ta2O5が高屈折率を保ったまま低分散化する重要な添加物であることがわかった.分光学的手法による構造解析の結果から,これはO2-のイオン性の低下を抑えられたことに依ると結論づけた.さらにこの系にフッ素を導入することに成功した.これは,無容器法による酸フッ化物ガラスの合成の初めての例であり,無容器法の可能性や,工学材料としての応用を広げるという意味で,注目を集めた.またTiO2系では,La2O3-TiO2-ZrO2(HfO2)を中心としてガラス化範囲を明らかにし,屈折率などの光学特性を明らかにした.さらにWO3系ガラスは,屈折率は2を少し超える程度であったが,赤外域での光透過性が優れていたこと,そして低いガラス転移温度であることがわかり,赤外域に特化した材料としても注目される.放射光X線回折実験や中性子回折実験,さらに計算機実験による構造解析からは,このようなイオン性の高い酸化物ガラスは,従来のガラス形成則から大きく逸脱していること,そして,酸素の原子配列において金属ガラスの構造との類似性を見出した.
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