2012 Fiscal Year Annual Research Report
二次元三角格子酸化物薄膜を用いた室温マルチフェロイック材料の創製
Project/Area Number |
23760026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 宗俊 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40432439)
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Keywords | 自然超格子 / フェライト薄膜 / パルスレーザー堆積法 |
Research Abstract |
二次元三角格子・層状酸化物RFeO3・(FeO)n (R: 希土類元素など、n: 整数)を対象として実験を行い、スピン秩序と電気双極子秩序の同時発現を目指した。試料はパルスレーザー蒸着法によりYSZ単結晶基板上に形成した(In, Lu)(Fe, Zn)2O4薄膜を用いた。電気伝導特性を詳細に調べた結果、薄膜試料は半導体的な挙動を示し、特に電荷整列温度以上の高温領域で2次元バリアブルレンジホッピングが支配的になることが分かった。In層では、Inの5s軌道の重なり、Fe層ではFe2+-Fe3+間の3d電子のホッピングが伝導機構として考えられるが、Fe2+をZn2+で置換した場合には電気伝導度に変化がないのに対して、In3+サイトをLu3+で置換した場合は、キャリア数が大幅に減少するという実験事実から、三角格子面内のIn-5s,5p軌道の電子がキャリアとなっていることが示唆された。これは第一原理計算に基づく電子状態密度計算の結果と一致する。InFe2O4はRFe2O4の中でも最も電気抵抗率が低く、そのままではマルチフェロイック材料としての応用は極めて難しいが、上記のように元素置換を行って抵抗を更に増大させると同時に、酸素欠損量や元素置換量を変えて、Feイオンの価数状態を制御すれば、電荷移動型強誘電体を実現することができると期待される。また我々は、酸化雰囲気中ではRFe2O4とは別の二次元三角格子構造を持つRFeO3が成長することを見出した。このRFeO3において、不純物イオン(Nb5+等)を添加することにより、電気磁気効果および光誘起磁性が発現することが分かった。これは、不純物添加あるいは光照射によりFeイオンの価数が変化し、あらたな電荷秩序相が形成されたためだと考えられる。
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