2011 Fiscal Year Research-status Report
微小噴流アクチュエータによるアクティブ燃焼制御機構に関する研究
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23760184
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋木 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60550499)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 燃焼 / 噴流 / 混合 / 能動制御 / レーザー計測 |
Research Abstract |
本研究は,マイクロガスタービン・小型分散エネルギーシステムの高性能化に関する基礎研究である.マイクロガスタービンなどで使用される小型燃焼器は,高負荷変動に伴い,燃焼効率の低下,窒素酸化物排出量の増加および火炎の不安定化が懸念されている.一方で,燃焼現象は,分子レベルの化学反応と熱・物質・運動量の混合・拡散が相互に干渉する系であるため,流れの積極的な制御を通じた燃焼特性の著しい改善が期待される.そこで,本研究では,ガスタービン燃焼器内で多用される噴流燃焼場を対象とし,微小噴流アクチュエータ群を用いて,噴流せん断層中の大規模渦構造およびそれに伴う燃料・空気混合の動的な制御を行うことを目的とした.負荷状況に応じて,微小噴流の吹き出し特性を変化させ,混合を柔軟に制御することで,常に高効率クリーン安定燃焼を維持できる,新たな燃焼制御手法の提案を目指している. 当該年度は,基礎的な流れ場である単軸円形噴流を制御対象とし,渦運動および混合の能動制御を行った.円形噴流ノズル出口の内壁には,24個の微小噴流孔が配置され,主噴流の初期せん断層に,速度攪乱を直接的に与える.微小噴流の吹き出し特性の操作には,高速応答の電磁バルブを適用した.制御メカニズムの解明には,高速度レーザートモグラフィーおよび粒子画像流速計(PIV)を用い,特にPIVでは,不確かさ解析を通じた測定精度の向上を図った.その結果,まず,微小噴流の周期的な吹き出しに完全に同期して,周方向に軸を持つ渦輪を生成できることが示された.また,制御周波数を変化させることで,渦輪の放出周波数および大きさを調整でき,流体の輸送・混合特性を柔軟に制御することが可能である.さらに,噴流の混合促進および火炎の安定化に極めて重要な縦渦の形成も確認でき,本制御手法による噴流の時空間発達の基礎的なメカニズムが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目的は,噴流燃焼用アクティブ制御ノズルの開発を行うとともに,主噴流と微小噴流の干渉による渦の発達および混合の基礎的なメカニズムを調査することであった.そのため,はじめに,微小噴流の吹き出し特性を操作する電磁バルブの動作テストを行い,幅広い周波数領域において,流量の周期的かつ多彩な制御が可能であることを確認した.また,本電磁バルブを,微小噴流孔群を備えた特殊円形ノズルと組み合わせることで,アクティブ制御ノズルを作製し,基礎的な流れ場である単軸円形噴流を対象として制御を試行した.その結果,本制御手法による渦輪・縦渦の生成過程およびそれに伴う流体の輸送・混合過程を,レーザートモグラフィーによる流れの可視化およびPIVによる流速場の測定により定量的に明らかにし,次年度以降に行う実機を想定した同軸噴流制御・燃焼制御に向けた具体的な指針を得た.以上のことから,当該年度で得られた成果は,目的に照らして肉薄できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,実機の熱流動を想定したメタン・空気同軸噴流の混合・燃焼のアクティブ制御を行う.同軸噴流では,外側せん断層(環状噴流と周囲雰囲気の界面)と内側せん断層(中心噴流と環状噴流の界面)の2つのせん断層が形成されるため,単軸噴流と比較し,渦の発達様相が異なることが予想される.まずは,本制御手法が,内外せん断層の渦の巻き上がりに及ぼす効果を,単軸噴流との比較も通じて調査し,渦の放出周波数・大きさの操作を通じた,メタン・空気混合の柔軟な制御を行う.さらに混合制御実験で得た知見を踏まえ,本手法を同軸噴流火炎に適用する.渦運動の操作により,火炎上流における燃料・空気の混合過程を制御し,異なる負荷条件の下で,燃焼特性の改善を試みる.即ち,ガスタービンの全負荷運転時を想定した当量比が大きい条件では,大スケール渦による均一混合を図る.一方,部分負荷運転時を想定した,当量比が過少な条件では,小スケール渦の放出を通じた局所的な混合により,可燃混合気を形成し,火炎を安定化させる.PIV,CH・OHラジカル自発光の画像計測および排出ガス分析を用いて,制御メカニズムを解明し,新たな燃焼制御手法の構築を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,本研究の焦点に合った学会が遠方で多く開催されるため,当該年度の予算の一部(86,277円)を旅費に使用するために繰り越した. 今後は,微小噴流アクチュエータによる,同軸噴流の混合・燃焼特性のアクティブ制御を行うことを計画しており,そのため,電磁バルブ,CH・OHラジカル自発光用干渉フィルターを備品として計上した.消耗品には,当該年度に引き続き,レーザー計測のための光学部品,噴流燃焼装置のためのパイプ・継ぎ手,メタンガス,PIV粒子を計上した.また成果発表のための学会旅費および論文投稿料を計上した.
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Research Products
(1 results)