2012 Fiscal Year Research-status Report
微小噴流アクチュエータによるアクティブ燃焼制御機構に関する研究
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23760184
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋木 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60550499)
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Keywords | 燃焼 / 噴流 / 混合 / 能動制御 / レーザー計測 |
Research Abstract |
オンサイト発電用マイクロガスタービンなどで使用される小型燃焼器では,低レイノルズ数による混合不良と高い負荷変動に伴い,燃焼効率の低下,窒素酸化物排出量の増加および火炎の不安定化が懸念されている.一方,燃焼は,化学反応と熱・物質の混合・拡散が深く干渉する現象であるため,流れの積極的な制御を通じた燃焼特性の著しい改善が期待される.そこで,本研究では,ガスタービン燃焼器内の典型的な熱流動である噴流燃焼場を対象とし,ノズルに配置した微小噴流アクチュエータにより,流れの渦運動およびそれに伴う燃料・空気の混合を動的に制御することを目的とした.負荷状況に応じて,混合を操作し燃焼特性の改善を行う能動制御システムの構築を目標としている. 当該年度は,ガスタービン燃焼で多用されるメタン・空気同軸噴流を対象とし,同軸ノズル出口内壁に配備した微小噴流アクチュエータ群により,同軸噴流中の渦構造およびメタン・空気混合の能動制御を行った.2成分粒子画像流速計(2C-PIV)およびステレオ画像を用いた3C-PIVにより,流れ場を定量的に評価した結果,微小噴流の周期的な吹き出しに完全に同期して,内外せん断層に強い渦輪および縦渦を放出できることが判った.特に,メタン流と空気流の界面である内側せん断層に形成される渦は,二流体の混合を著しく促進させる.また,微小噴流を吹き出す周波数を変化させることで,渦の大きさを操作し,均一に混合を促進するのみでなく,せん断層付近で局所的に混合を行うなど,混合特性を柔軟に制御可能なことも明らかにした.さらに,これを踏まえ,同軸噴流火炎の予備的な制御実験を試みた結果,ガスタービンの部分負荷運転時を想定した当量比が過小な条件下でも,小さな渦による局所的な混合により可燃混合気を形成することで,火炎安定性などを改善できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目標は,前年度までの単軸噴流での制御結果を踏まえ,実機で多用されるメタン・空気同軸噴流の渦構造および混合特性を制御することであった.単軸噴流と異なり,同軸噴流では,内側せん断層(中心噴流と環状噴流の界面)と外側せん断層(環状噴流と周囲雰囲気の界面)の2つのせん断層が形成され,特にメタン流と空気流の界面である内側せん断層の渦構造は,二流体の混合を制御する上で重要となる.本実験を通じて,まず,微小噴流アクチュエータを周期的に駆動させることで,内外せん断層双方に渦を生成できることが判った.また,アクチュエータの駆動周波数を変化させることで,渦径を操作し,二流体の混合を柔軟に制御できることも明らかにした.さらに,これらの結果を踏まえ,同軸噴流火炎に対する予備的な制御実験を行い,火炎の観察から,安定性をはじめとした燃焼特性を著しく改善できる可能性を確認した.以上のことから,当該年度で得られた成果は,目的に照らしておおむね達成できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,これまでの混合制御実験の結果に基づき,同軸噴流燃焼の能動制御を行う.具体的には,ノズル下流に設置した保炎器の後流に形成される火炎を制御対象とし,ノズル出口から保炎器上流の混合過程を柔軟に操作することで,異なる負荷条件の下で,燃焼特性の改善を試みる.即ち,ガスタービンの全負荷運転時を想定した当量比が大きい条件では,大スケールの渦による均一な混合を図る.一方,部分負荷運転時を想定した当量比が過小な条件では,小スケールの渦による局所的な混合により可燃混合気を形成し,火炎を安定化させる.燃焼特性の評価は,火炎の観察による保炎限界の調査および排出ガス分析により行い,制御メカニズムの解明には,2C-PIV/3C-PIVおよびCH/OHラジカル自発光計測を使用する.また,燃料には基本的にメタンを用いるが,石油代替燃料であるバイオマス由来のガス燃料などについても本手法が適用可能であるか検討を加え,持続型エネルギー社会に貢献できる新たな燃焼制御技術の提案を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,燃料・空気混合の操作を通じた,同軸噴流燃焼の能動制御を行うことを計画しており,そのため,噴流燃焼装置・排気ガス分析のためのパイプ・継手,レーザー計測のための光学部品・PIV粒子,メタンガスを消耗品として計上した.また,成果発表のための学会旅費および論文投稿費を計上した.
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Research Products
(3 results)