2011 Fiscal Year Research-status Report
異種原子導入によるSiC/絶縁膜界面欠陥の消滅とパワーMOSFETの革新
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23760283
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
矢野 裕司 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (40335485)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 炭化ケイ素 |
Research Abstract |
本研究では、申請者らが見出したSiC/絶縁膜界面へのリン(P)原子導入による界面欠陥低減を徹底的に追及することを目的とした。平成23年度は、(1)超低欠陥界面・超高チャネル移動度の実現を中心に研究し、また(2)リン導入MOSデバイスの信頼性評価についても研究を開始した。以下に、平成23年度の研究実績の概要を記す。(1)POCl3アニールによる界面へのリン導入だけでは除去できない欠陥があると考え、追加でH2処理を行ったところ、MOSFETのチャネル移動度が86cm2/Vsから101cm2/Vsと向上した。水素によるダングリングボンド終端の効果が表れたと考えられる。100を超える移動度を実現したことは意義が大きい。また、界面欠陥低減効果のあるNOアニールによる界面窒化とPOCl3アニールを組み合わせたところ、予想に反してチャネル移動度は47cm2/Vsと小さくなった。NOアニールで形成された強固なSi-N結合により、POCl3アニールによる界面歪の緩和効果が抑制されてためと考えられる。NOアニールとPOCl3アニールの組み合わせでは、チャネル移動度向上に効果はなかったが、しきい値電圧(またはフラットバンド電圧)の安定性が増すという重要な結果が得られた。(2)リン導入を行った酸化膜の瞬時絶縁破壊電界は未導入試料と比較して著しい劣化は見られなかった。定電流TDDB試験を行ったところ、非常にばらつきの小さいQbdが得られたが、その値は小さい。酸化膜内部の捕獲準位の影響により、注入された電子が捕獲され、そのために印加電界が増加する現象が確認された。リン導入酸化膜では、酸化膜電界が小さい場合は捕獲電荷の増加は見られないが、高電界となりFN電子注入してしまうと急激に捕獲電荷が増加するという重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンと水素、およびリンと窒素の組み合わせによる複合処理を行い、界面欠陥の低減および信頼性の向上を達成している。まだ目標とした数値(チャネル移動度200cm2/Vs)に到達していないが、リン・水素・窒素の役割を明確にした上で導入量を最適化することで、目標に近づけると考えている。また、信頼性評価を始めたところ、従来の酸化膜とは異なる特性が得られ、その解析を進めている。酸化膜中に一様に分布したリンにより、注入電子が捕獲されることがわかってきた。その結果をもとに、電子注入耐性を高める手法を考案し、現在試みている。また、これとは別に、窒素とリンを組み合わせることで信頼性が改善することに成功している。これら複数のアプローチにより界面特性の安定化を図ることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、リン導入量を詳細に制御できるようにPOCl3処理炉を改良中である。具体的には、デジタルフローメータ―の導入や炉のプログラマブル温度コントローラーの導入を行う。これにより、リン導入量を今まで以上に精密に制御できると考えている。リン・窒素・水素の導入量最適化を図り、さらなる界面欠陥の低減とチャネル移動度の向上を目指す。しきい値電圧(またはフラットバンド電圧)の安定性を詳細に調査し、不安定となる要因を明らかにしたうえでそれを排除し、安定性向上に取り組む。特に、TDDBを初め、各種バイアスストレス条件によるしきい値変動メカニズムについて調査する。パワーDMOSFETへの展開を考え、イオン注入層へのプレーナ型MOSFETの作製に取り組む。エピ層と比較を行い、不純物散乱やラフネス散乱の影響を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は、MOSFETを作製するためのイオン注入の回数が当初の予定より少なくなったことに加え、POCl3炉改良をH24年度に回したため研究費を繰り越すこととなった。H24年度はこれらの費用を積極的に活用し、改良炉による精密なリン導入量制御を行う。ソース・ドレイン領域だけでなく、チャネル部分にもイオン注入を行ってMOSFETを作製する。正確なリン導入量を評価するため、外部にSIMS測定を依頼する。デバイス試作回数を増やすため、SiCウエハの購入量も増える予定である。
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