2012 Fiscal Year Research-status Report
異種原子導入によるSiC/絶縁膜界面欠陥の消滅とパワーMOSFETの革新
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23760283
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
矢野 裕司 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (40335485)
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Keywords | 炭化珪素 / 界面準位 |
Research Abstract |
本研究では、申請者らが見出したSiC/絶縁膜界面へのリン(P)原子導入による界面欠陥低減を徹底的に追及することを目的としている。平成24年度は、前年度に引き続き1:超低欠陥界面・超高チャネル移動度の実現を進めることに加え、2:リン導入MOSデバイスの信頼性評価に関した研究を中心に行った。3:1kV級超低損失パワーDMOSFET作製については、イオン注入層の評価用サンプルの準備を始めた。以下に平成24年度の研究実績の概要を記す。 1:これまではSiC上に熱酸化膜を形成してからPOCl3アニールにより界面にリンを導入していたが、SiCに対して直接POCl3処理を行うことを試み、その後堆積膜を形成することでゲート絶縁膜を形成した。この手法では、より多くのリンが界面に導入されると考えたが、SIMSで評価したところ、従来法と同程度のリン濃度であり、明確な差は見られなかった。界面準位密度は従来法(熱酸化膜へのPOCl3アニール)よりやや多く、MOSFETのチャネル移動度も51cm2/Vsであり、従来法の84cm2/Vsを下回った。界面付近の酸化膜にCが検出されたことから、低温で直接POCl3処理する際に抜け切れないCが欠陥の原因であると考えることができる。 2:従来の熱酸化膜にPOCl3アニールした試料構造では、酸化膜中に一様にリンが導入されており、これが原因となり高電界で注入された電子を捕獲してしきい値(フラットバンド)電圧を変動させると考えた。上で記した構造、すなわち界面付近にリンを局在化させることで、定電流ストレス試験において、フラットバンド電圧シフト量を大幅に抑制することに成功した。従来のPOCl3アニール試料を含め、NOアニールした試料についてゲート電圧の掃引幅によるしきい値電圧の変化や、チャージポンピング法による界面特性評価にも取り組み、界面特性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン複合処理による界面欠陥の低減およびチャネル移動度の向上については、平成23年度を超えるさらなる改善を達成することはできなかった。しかし、リン・水素・窒素の役割がかなり明確になり、処理の組み合わせ及び順番に最適なものがあることが分かってきた。また、移動度の向上は見られなくても、TDDB耐性およびしきい値電圧の安定性、すなわち信頼性の向上に大きな進展がみられた。これらは、界面に一様にリンを分布させるのではなく、界面付近にのみリンを含ませた構造にすることで、電子注入耐性の向上を達成した。窒化と組み合わせることで、さらなるしきい値電圧の安定性向上が期待できる。移動度と信頼性・しきい値安定性をある程度高いレベルで両立する条件を見つけることで、さらなるチャネル移動度および信頼性の向上が可能と考えられる。また、DMOSFETを見据えた時にはイオン注入を用いるので、チャネル表面の不純物濃度を低くすることでチャネル移動度の向上が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
リン複合処理によって形成した試料について、しきい値電圧(またはフラットバンド電圧)の不安定性発生のメカニズムを詳細に検討する。従来から取り組んできた各種複合処理の界面特性と信頼性・不安定性の相関および測定条件の依存性を明らかにする。パワーDMOSFETへの展開するため、まずイオン注入層へのプレーナ型MOSFETの作製に取り組む。エピ層と比較を行い、不純物散乱やラフネス散乱の影響を調査する。キャリヤの散乱メカニズムを調査するため、キャリヤがトラップされることを考慮した解析を行うため、MOSFETに対してHall効果測定を試みる。1kV級のDMOSFETを作製し、本研究で開発した手法により超低オン抵抗となる1mΩcm2の実現を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はPOCl3アニール炉の改良やイオン注入、SIMS測定の外注を行ったが、平成23年度の繰り越し金もあったことに加え、イオン注入・SIMS測定の回数が当初の予定より少なかった。さらに、MOSFET用フォトマスクはデザインを慎重に検討中であり発注を見合わせているため、未使用額が生じることとなった。平成25年度はデバイス試作を増やすため、SiCウエハ購入やイオン注入および新たにデザインしたフォトマスク作製に研究費を用いる。繰り越した研究費を含め、研究目標達成に向けて研究費を活用する。
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Research Products
(14 results)