2012 Fiscal Year Annual Research Report
磁歪誘導軟磁性効果を利用した新原理超磁歪材料の開発
Project/Area Number |
23760287
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
柳井 武志 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30404239)
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Keywords | 磁歪 / 電析 / ナノ結晶 / 軟磁性 |
Research Abstract |
電解めっきによるFe-Ga膜の作製とFe-Gaのミクロ構造と磁気特性の関係解明を主に行った.Fe-Gaのめっき膜に関しては,Gaを水溶液中から析出させることが困難であることから,これまでにほとんど報告がなかった.最近,優れた特性を有するFe-Ga膜が報告されたが,めっき浴内に排水規制されているホウ素を含むホウ酸が用いられていた.そこで,排水規制物質を使用しないめっき浴としてクエン酸浴に着目した.陰極効率のクエン酸依存性を評価したところ,クエン酸量の増加に伴い,急激に陰極効率が減少することがわかり,クエン酸量が少ない方が望ましいことがわかった.少ないクエン酸濃度で作製したFe-Ga膜のXRDパターンから,Fe-Gaの結晶相の析出を確認した.クエン酸量が少ない範囲では,クエン酸添加による結晶粒の微細化効果は観測されなかったため,添加物を用いて結晶粒を微細化することが今後の課題となった. Fe-Gaのミクロ構造と磁気特性の関係を明らかにすべく,保磁力の結晶粒径依存性に関して計算機解析を行った.その結果,結晶粒径を小さくすると,Thefenol-Dが20 nm付近の結晶粒径で急激に保磁力が減少するのに対し,Fe-Gaでは100 nm付近から滑らかに保磁力が減少することがわかった.すなわち,Terfenol-Dで観測されたような急激な特性改善は,Fe-Ga合金では観測されない結果となった.ただし,Fe-Gaの保磁力はもともとTerfenol-Dよりも小さく,また特性の改善が完了する結晶粒径が50 nm付近である.この値はTerfenol-Dの20 nmよりは大きな粒径値であり,Fe-GaはTerfenol-Dよりも組織制御による軟磁気特性が容易であることを示唆するものである.本結果より,当初の予想通り,Fe-Gaはより「磁歪誘導軟磁性効果」を発現しやすい合金系であることが確認できた.
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Research Products
(2 results)