2011 Fiscal Year Research-status Report
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23760326
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
柏木 謙 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10509730)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光パルス合成 / 光パルスシンセサイザ / ソリトン / ダークパルス / ダークソリトン / 光学非線形現象 |
Research Abstract |
周波数軸上での振幅・位相変調による光パルス合成は、任意の光波形が合成可能なことから様々な用途で研究されている。研究代表者は光ファイバ通信で利用される通信波長帯で光パルス合成が可能な光パルスシンセサイザの応用研究を進めている。本研究課題では、ダークパルス、特にダークソリトンの生成にこの光パルスシンセサイザを用いている。ダークパルスは、ある一定の光強度背景中に強度がゼロとなる窪み部分のことを指し、このような形状から"ダーク"パルスと呼ばれる。それと対比して通常の光パルスのことを"ブライト"パルスと呼ぶ。また、光ファイバ中の分散と非線形現象が釣り合って、光パルス形状が変化せずに伝搬するパルスをソリトンと呼ぶ。ブライトソリトンに比べて、ダークソリトンは良好な特性を有していたが、その生成方法が特殊であるためにあまり実験的な検討が進められて来なかった。研究代表者は新たなダークソリトンの生成目標波形を提案し、その光ファイバ中の伝搬特性を検討している。 研究開発当初においても光パルスシンセサイザによるダークパルスやダークソリトンの生成に成功していたが、その生成の精度が低く、特に強度がゼロになるべき時間でゼロになっていなかった。光波形の合成精度の改善を行うことで、光波形のコントラストは20dB以上を実現して、目標どおりのダークソリトンを生成することが可能になった。この手法により、4psから10psのパルス幅を持つダークソリトンを生成することが可能になった。また、ダークソリトンはその前後で位相がπ変化することが知られているが、遅延干渉計を用いることで、生成したダークソリトンが理論どおりに位相変化していることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究目的には大きく分けて2つの目的を掲げた。1点目はダークソリトンの精密合成であり、これはすでに本年度で達成している。2点目はダークソリトンの非線形光学応用、特にソリトン伝搬の実験的な検証と計算機シミュレーションとの比較による理論検討である。一般に解析的には光パルスの伝搬を表現できないため、数値シミュレーションとの比較とした。本年度では、このうち計算的検討を進めることを目標としていた。計算シミュレーションはすでに本年度で確立しており、実際の実験条件に合わせた計算を進めている。また、実験的な検討もすでに開始しているが、計算機シミュレーションの結果とで差が生じているため、この差の原因を調査して、改善する方針で進めている。上記のことから、本研究課題はおおむね順調に進んでいると考えている。また、ダークパルスによる広帯域光の生成の計算機シミュレーションは既に確立しているため、この計算を引き続き進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに合成したダークパルスの伝搬特性の測定を開始しているが、上述のとおり測定結果と実験結果に差が生じている。この原因は、計算機シミュレーションに導入することの難しい、光の入力強度に対して非線形的に生じる散乱(ブリルアン散乱)光による非線形的な損失が原因と考えられる。計算機シミュレーションにこの効果を導入しても実験との相違の原因は確認できる。しかし、非線形的な損失が原因でソリトン伝搬を実現することは難しい。実験的にダークソリトンのソリトン伝搬を実証するために、非線形損失を抑える手法の導入すすめている。ブリルアン散乱はスペクトル線幅が細い場合に生じるため、故意に位相変調をかけてスペクトルを拡散させることで抑圧することができる。位相変調によって生じるスペクトル拡散は光パルスの帯域よりも格段に狭いために、光パルス波形自体に大きな影響を与えることはない。このスペクトル拡散の手法を導入して、実験的にダークソリトンのソリトン伝搬を実証する。また、ダークパルスによる広帯域光の生成には、計算機シミュレーションによる実現可能性の検討と最適な実験条件導出の後に、実験的な検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用用途としては、雑音除去用の光フィルタが挙げられる。ダークソリトンのソリトン伝搬には比較的高強度にする必要があり、その結果、雑音が大きく生じるため、高強度の光が入力可能な雑音除去用のフィルタが必要と考えられる。その他にも、上述の変調信号を増幅するための電気アンプを初めとした電気部品や、光ファイバ・光カプラや光アイソレータを初めとした光学部品などの消耗品が必要である。また、国内外の会議での発表のための費用や論文掲載料としての利用も予定している。
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Research Products
(10 results)