2011 Fiscal Year Research-status Report
異方性材料に対する新しい波動解析手法の開発と超音波非破壊評価への適用に関する研究
Project/Area Number |
23760418
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斎藤 隆泰 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00535114)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 超音波非破壊評価 / 時間領域境界要素法 / 異方性弾性体 |
Research Abstract |
時間領域境界要素法は、波動問題に対して有効な数値解析手法として知られている。しかしながら、異方性弾性波動問題に対する時間領域境界要素法は、国内外問わず、ほとんど行われていないのが現状である。その理由は、時間領域境界要素法で必要となる基本解が閉じた形で与えられておらず、非常に複雑な形式をしていること、時間増分が小さい場合に数値解が不安定になりやすいということが原因として挙げられる。そのため、より安定で使いやすい異方性弾性波動問題に対する時間領域境界要素法を開発することができれば、異方性材料に対する超音波非破壊評価等の数値シミュレーションに大いに役立つと思われる。 そこで、平成23年度の研究では、2次元および3次元異方性弾性波動問題に対する新しい時間領域境界要素法の開発を行った。新しい開発において、今回新たに演算子積分法と呼ばれる畳み込み積分を精度良く、安定に計算できる手法を、時間領域境界積分方程式に登場する畳み込み積分の離散化に用いた。この演算子積分法では、時間領域基本解を必要とせず、ラプラス変換域の基本解を必要とする。そのため、定式化は周波数領域の境界要素法と類似するため、従来の時間領域異方性弾性波動問題の定式化に比べ、各段に取り扱いが易しくなった。また、演算子積分法を適用したことにより、数値解の安定性が各段に向上した。そのため、解析時間ステップ数が多い場合でも、解析を安定に進めることが可能となった。 実際に数値解析コードを作成し、2次元、3次元両者の場合に対して異方性弾性体中の空洞による散乱問題を解析した。数値解析結果は、物理的に妥当な結果を示し、本手法で精度良く異方性弾性波動場を解析することが可能となった。また、平成24年度で行う予定だった計算の効率化についてもMPI等を用いて既に検証を一部行い、効率化を実現出来ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における研究の目的は、大きく分けて2つ有り、1.異方性弾性波動解析のための演算子積分時間領域境界要素法の開発と解析コードの作成と2.開発した解析コードの計算精度の確認であった。これらについては、研究実績の概要で示したとおり、2次元、3次元異方性弾性波動問題に対して演算し積分法を適用した新しい時間領域境界要素法を開発しており、達成は十分であると言える。一方、平成24年度には平成23年度に開発した手法をさらに効率的に解析が行えるよう工夫することを計画しているが、その一部は平成23年度に前倒しして行っている。そのため、平成23年度における本研究は、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度に開発したプログラムの効率化を行う。そして、平成23年度の結果と比較することで、効率化の実行性能を確認することを行う。効率化についての検討は次の2つのアプローチから成る。1.理論的アプローチでは、平成23年度の定式化を改良し、高速多重極法や、それに類似する新たな高速解法を適用することで、解析に必要なトータルの計算時間を低減する方法を開発することを行う。一方、2.ハードウェアによるアプローチでは、GPU(Graphical Processing Unit)の利用を基本とする。GPUによる計算は、従来のCPUに比べて高速な計算が可能であり、近年、計算機科学の分野で注目を集めている。そこで、理論的アプローチの次に、現状での最速な解析コードを目指し、MPIやGPUを用いた高速化を実現することを行う。それぞれのアプローチを実現した後、実際に大規模な異方性弾性波動解析を実行することで、計算効率をどの程度改善することができたか等について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はGPUによる計算の効率化を行う。したがって、GPU計算を可能とするためのFortranコンパイラを購入する。また、解析後のデータ処理に必要なグラフ作成ソフト等の購入等も行う。また、研究代表者は平成24年度より、所属研究機関が移動となった。そのため、新たな所属研究機関において、どの程度計算機(ワークステーション)を使用でき、かつ大規模計算を実行できるか、現在検討中である。学内で大型計算機を使用できない場合は、新たに計算機一式を購入することで対応する予定である。また、その他、国内、国際会議の参加費、論文投稿費、研究に必要な資料収集のための旅費等に研究費を使用する予定である。 なお、23年度当初は本研究課題の採択やその後の交付決定等が震災の影響で遅れたために、講演申し込みを予定していた学会に一部参加できなかったこと、論文投稿等についても影響を与えた。そのため、それらの分は次年度使用とした。
|
Research Products
(8 results)