2011 Fiscal Year Research-status Report
打音・表面振動・弾性波の相関性に着目した鋼板巻立て橋脚の点検診断技術の確立
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23760435
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
玉井 宏樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20509632)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 打音 / 構造振動 / 音響解析 |
Research Abstract |
本研究では,予防保全型維持管理の概念に基づき,鋼板巻立てコンクリート内部の健全度・経年劣化を適切に評価するために,打音と表面振動と弾性波の相関性に着目した「低コストで簡易な信頼性の高い点検診断技術」を確立することを最終目標としている.その目標を達成するための第一段階として,本年度は下記2項目に重点を置き研究を実施した.1.内部に人工欠陥を有するモルタル供試体と鋼板巻き補強コンクリート供試体を用いた供試体実験:まず,音圧や周波数特性などの打音情報や表面振動特性が内部欠陥の有無や種類によりどの程度の変化を示すか等の基本特性を把握する目的で,人工欠陥を有するモルタル供試体を欠陥種別や大きさをパラメータとして複数体製作し,打音試験を実施した.その結果,コンクリートの欠陥状態の変化は,特に高周波数域に影響を与え,今回提案した音圧または表面加速度の最大値の健全供試体との相対差で定義したピーク値パラメータや8kHzから20kHzにおける周波数特性に着目し,この範囲における卓越周波数の健全度供試体との相対差で定義した周波数パラメータを用いることで,欠陥の有無や状態を適切に把握することが可能であるなどの成果を得ることができた.次に,鋼板巻き補強コンクリート供試体の製作を実施した.実験パラメータは,鋼板の厚さ・人工欠陥(発砲スチロール)の埋設深さ・コンクリートの劣化状態である.2.打音と表面振動と弾性波の発生メカニズムとそれらの相関性を理論的に解明ための数値解析技術の構築:本年度は,汎用ソフトを利用して構造振動・音響連成解析技術の確立のための基礎検討を実施した.具体的には,音響解析ソフトウェアActranを基盤として,ユーザーサブルーチンを利用した連成解析技術を開発した.現段階では適用性の検討段階であり,打音と表面振動と弾性波発生メカニズムや相関性の解明については次年度上旬に実施予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では,「(1)打音と表面振動と弾性波の発生メカニズムとそれらの相関性の理論的解明のための数値解析」,「(2)鋼板巻き立てコンクリートの内部欠陥と3つの特性(打音特性,表面振動,弾性波)の関係性の把握 その1 ~供試体実験~」を実施する計画を立てていたが,その達成度は約90%でおおむね計画通りに順調に進んでいるといえる.しかし,当初予定していたソフトウェアの購入が遅れたことに伴い,構造振動―音響連成解析技術の開発はやや遅れているといえる.この遅れは次年度の上半期で取り戻せる予定であり,全体の流れには大きな問題はない.また,供試体実験については,年度をまたぐ今まさに実験中のものもあり,ほぼ順調に進んでいるといえる.次年度の計画の大幅な変更なしに研究を進めていけば,当初予定していた研究成果を得ることができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の内容および推進方策は下記の通りである.(1) 「鋼板巻き立てコンクリートの内部欠陥と3つの特性(打音特性,表面振動,弾性波)の関係性の把握 その1 ~供試体実験の続き~」:様々な内部欠陥や劣化を考慮した鋼板巻き立て補強したコンクリート供試体の打音試験を引き続き実施することで,打音特性・表面振動・弾性波それぞれの応答変化を調べるとともに,それらの相関性を把握する.さらに,コンクリートが鋼板等の異種材料で被覆された場合に対する打音法の適用限界についても検討する.(実験に関する研究協力者との打ち合わせで旅費を20万円計上)(2)「鋼板巻き立てコンクリートの内部欠陥と3つの特性(打音特性,表面振動,弾性波)の関係性の把握 その2 ~シミュレーション~」:供試体実験を対象とした大規模シミュレーション(構造-音響連成解析)を実施することで,鋼板を巻き立てられたコンクリート内部の欠陥状態と3つの特性(打音,表面振動,弾性波)との定量的な関係を適切に再現できるシミュレーション方法を確立する.シミュレーション方法が確立した上で,欠陥の大きさや深さなどをパラメータとした様々な解析を実施し,内部欠陥状態と3つの特性との関係性を示す多数のデータを収集する.(解析結果は莫大なデータ量になる可能性があり,大容量HDDが必要となるため,物品費に5万円計上)(3)「内部欠陥の有無や大きさを判断可能な特徴量関数の提案」:供試体実験とシミュレーションから得られたデータを整理することで,内部欠陥状態を精度良く評価できる特徴量関数(多変数関数;特徴量を基底とした多次元空間)の提案を行う.(成果を取り纏めた論文投稿料のため10万円計上,土木学会やコンクリート工学会での発表等の旅費のため15万円計上,最終報告書作成・印刷代で10万円計上)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:特に購入予定なし旅費:実験に関する研究協力者(横須賀)との打ち合わせで20万円使用予定(50千円×4回),土木学会西部支部や全国大会などでの研究成果発表のため15万円使用予定謝金等:特に予定なしその他:論文投稿料で10万円,成果報告書印刷費用で10万円,データ保存用メディアで5万円使用予定
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