2012 Fiscal Year Research-status Report
合掌造り家屋床下の焔硝生産遺構に生息する新規微生物が有する未知硝化経路の解明
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23760512
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成廣 隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (20421844)
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Keywords | 微生物生態 / 環境生態 / 微生物分類 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
昨年度に実施した合掌造り家屋床下土壌遺構の分子生態解析の結果から、土壌中に含まれる硝化反応関連微生物(アンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌)の存在量が極めて低いことが示された。そこで今年度は、9サンプルの床下遺構土壌を対象とし、次世代シークエンス技術を利用したパイロシークエンス法に基づく分子生態解析を実施し、極めて低い量でしか存在していない硝化反応関連微生物の多様性を明らかにすることを試みた。パイロシークエンス解析の結果、各サンプルから3,000~11,000個ずつ、合計約70,000個の16S rRNA遺伝子配列を獲得することができた。得られた遺伝子配列情報を16S rRNA遺伝子データベースSILVAと照合し、相同性情報等から原核生物の各系統群に分類して硝化関連微生物の存在率を解析したところ、0.1%~7.8%のポピュレーションを占めていることが明らかとなった。硝化関連微生物に該当する遺伝子配列の系統学的情報から、昨年度の解析では見出すことの出来なかったNitrosococcus属、Nitrosospira属、およびNitrosomonas属に近縁のアンモニア酸化菌、Nitrococcus属およびNitrospira属に近縁の亜硝酸酸化菌の存在を明らかにすることができた。さらに、アンモニア酸化菌の存在率が高い土壌試料は塩濃度が比較的低かったことから、昨年度実施したクローンライブラリ解析の結果から見出した好塩性微生物との棲み分けが示唆された。これらの結果から、パイロシークエンス法に基づくディープシークエンス解析により、床下土壌遺構の硝化反応関連微生物の多様性を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度当初の計画に従い、合掌造り家屋床下から採取された土壌に生息する硝化反応関連微生物群の多様性を、次世代シークエンス技術を利用したパイロシークエンス法に基づく分子生態解析により明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に実施したパイロシークエンス法により、合掌造り家屋床下土壌遺構に生息する硝化反応関連微生物の分子生態学的多様性の一端を明らかにすることができた。最終年度となる3年目は、これまでの実験で有用性が示された次世代シークエンス技術をアンモニア酸化遺伝子(amoA)の多様性解析に適用し、さらに詳細な解析を実施する。アンモニア酸化遺伝子などの機能遺伝子の多様性を次世代シークエンス技術により解析した研究例は極めて少なく、合掌造り家屋床下土壌遺構に生息する硝化関連微生物の解明にとっても有用な知見になると考えている。また、これまでのデータをまとめ、論文化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、次世代シークエンス解析や培養実験のための各種消耗品、および次世代シークエンス技術を利用した一連の遺伝子解析を実施するための海外旅費を主に計上する予定である。
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