2011 Fiscal Year Research-status Report
市街地情報の不完全性を考慮した市街地火災による建築物の火災被害リスク評価
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23760600
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Research Institution | National Institute for Land and Infrastructure Management |
Principal Investigator |
岩見 達也 国土技術政策総合研究所, 総合技術政策研究センター, 主任研究官 (20370744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 市街地火災シミュレーション / 計算速度 / 予測精度 / 開口部の対面性 / ステレオ撮影 |
Research Abstract |
本課題では、市街地火災シミュレーションを用いた精緻な予測を行う際の、(1)計算時間が長時間必要、(2)精緻な計算に耐える精度の高いデータの入手が困難、という大きな2つの課題に対応するため、計算時間を短縮するための新たな評価モデルの構築、並びに、データ精度と予測精度の関係分析及び予測精度を保つために必要なデータを比較的入手可能なデータに基づいて効率よく取得する手法の提案を行うこととしている。 新たな評価モデルの構築に関しては、遠方火源からの放射熱の影響を計算する際の、受熱点から見た放射源の見通し判定(他の建築物等の遮蔽物によって遠方の火炎が遮蔽されるかどうかの判定)における計算負荷が最も大きいことを考慮して、計算条件ごとの個別処理を行う前に、共通して必要となる前処理として各受熱点から見た遮蔽物の存在位置を計算した上でデータベースとして保存する処理を行うこととし、一部プログラム開発により既存の市街地火災シミュレーションプログラムに実装した。また、東京都を対象に、現状の市街地火災シミュレーションプログラムを用いた精緻な計算による検証データの整備を開始した(平成24年度も継続して実施予定)。 効率的なデータ取得手法の提案に関しては、開口部の位置を恣意的に変動させた仮想市街地データを作成し、シミュレーションを実行することにより、開口部の対面性(受熱側開口部から加害側開口部を見るときの距離及び対面角度)によって延焼性状が大きく異なることを確認するとともに、市街地火災の危険性が比較的高いと想定される住宅地を対象として開口部の設置状況に関する実態調査を行い、実市街地における開口部位置に関するデータを収集した。市販の3次元ステレオ撮影が可能なデジタル写真画像を用いて隣棟間の相対的な開口部設置状況を簡易に取得する手法の検討を行い有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな評価モデルの構築に関しては、事前に各受熱点から見た遮蔽物の存在位置を計算し効率的に、遠方火源からの放射熱の影響を算定するためのモデル化を完了し、一部プログラムの実装を行った。当初事前計算結果をデータベースに保存する処理については外注により実施することとしていたが、研究代表者自身によるプログラム作成により実装することとした。 また、当初予定通り、現状のシミュレーションプログラムを用いた精緻な計算による検証データの整備については、東京都を対象として開始した。 効率的なデータ取得手法の提案に関しては、開口部の位置を恣意的に変動させた仮想的な市街地データを用いて開口部の対面性と延焼性状の関係を確認した。当初既存資料を用いた開口部配置の制約条件の抽出を行うこととしていたが、データの制約から十分にできなかったことから、現地実測調査を先行して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな評価モデルの構築に関しては、当初計画通り、モデルに基づいたプログラム作成を引き続き実施するとともに、現状の市街地火災シミュレーションプログラムを用いた検証用の精緻な計算結果の蓄積を進める。その上で、新たな評価モデルの導入による計算速度及び計算結果の違いを整理し比較検証を行う。また、並行して、複数のCPUを用いた並列処理による高速化のためのプログラム作業を外注により実施する。 効率的なデータ取得手法の提案に関しては、23年度に、現地実測調査で取得した3次元ステレオ撮影画像に基づいて、隣棟間の開口部対面状況に関するデータ取得の可能性について検討を行い、一定の有効性が確認できたことから、取得した3次元ステレオ撮影画像の効率的な処理による簡易なデータ取得手法の検討を行い提案のとりまとめを行う。なお、当初23年度の実施を予定していた開口部配置の制約条件の抽出は、現地実測調査結果を踏まえて平成24年度に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たな評価モデルの構築に関しては、複数のCPUによる並列処理プログラムの作成について、高度なプログラム技術を要することから専門業者への外注により実施する。 効率的なデータ取得手法の提案に関しては、3次元ステレオ撮影画像の効率的な処理による簡易なデータ取得手法の検討を行うため、撮影画像処理に関する部分については、高度なプログラム技術を要することから専門業者への外注により実施する。その際には、新たな評価モデルにより必要となる前処理結果のデータベース保存に関するプログラム開発を研究代表者自身が実施したことにより、平成23年度に支出しなかった外注費を活用する。 国内旅費に関しては、開口部設置状況に関する実態調査及び研究成果発表のために使用する。
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