2012 Fiscal Year Research-status Report
イオン照射を用いた微細組織制御によるヘテロ構造SiCナノチューブの創製とその機能
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23760646
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田口 富嗣 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (50354832)
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Keywords | SiCナノチューブ / イオン照射 / 微細組織観察 / 透過型電子顕微鏡 / ヘテロ構造 |
Research Abstract |
昨年度までに、多結晶SiCナノチューブを、原子力機構 高崎研究所TIARA照射施設において、900℃以上の高温でイオン照射することにより単結晶SiCナノチューブが、また、200℃以下の低温でイオン照射することにより微結晶SiCナノチューブ及びアモルファスSiCナノチューブが合成可能であることを明らかにしている。当該年度では、特に、200℃以下の低温照射において、イオン種を、Ni、Zr、Auと変化させ、多結晶SiCナノチューブに照射した。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微細組織変化を観察した結果、原子番号が大きいイオンで照射した場合、原子番号が小さいイオンで照射した場合に比べて、小さな照射量で、多結晶SiCナノチューブから微結晶SiCナノチューブ及びアモルファスSiCナノチューブに変化することを明らかにした。 また、多結晶SiCナノチューブの前面にマイクログリッドを設置して、200℃以下の低温でイオン照射を行った。その後、TEM観察を行った結果、一本のSiCナノチューブ内で、多結晶領域とアモルファス領域が混在した多結晶-アモルファスヘテロ構造SiCナノチューブの合成に成功した。さらに、この多結晶-アモルファスSiCナノチューブの微細組織を詳細に観察した結果、イオン照射により、SiCナノチューブの内径及び外径が共に減少していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において、多結晶SiCナノチューブから微結晶SiCナノチューブ及びアモルファスSiCナノチューブの合成に成功していたが、当該年度では、これらの照射イオン種を変化させることで、多結晶SiCナノチューブから微結晶SiCナノチューブ及びアモルファスSiCナノチューブを合成可能な最小値が変化することを明らかにしている。さらに、当初の計画通り、マイクログリッド等でイオン照射領域をマスクすることにより、実際に、多結晶-アモルファスヘテロ構造SiCナノチューブの合成に成功したため、本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、SiCナノチューブのイオン照射後の微細組織観察を行って評価していたが、今後は、イオン照射装置付き透過型電子顕微鏡において、イオン照射を行い、多結晶SiCナノチューブの微細組織変化に及ぼす照射の影響のその場観察を行うことを試みる。これにより、多結晶SiCナノチューブから、アモルファス化する過程や、本年度明らかにしたイオン照射によるナノチューブの内径及び外径の減少についての過程を、その場観察で詳細に評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原子力機構 高崎研究所にてイオン照射を行っているため、原子力機構 東海研究所-高崎研究所間の出張旅費が引き続き必要となる。また、イオン照射後のSiCナノチューブの微細組織観察を透過型電子顕微鏡で行うため、本装置の消耗品を購入予定である。さらに、SiCナノチューブのイオン照射その場観察を行うため、透過型電子顕微鏡内でイオン照射が可能な透過型電子顕微鏡用試料ホルダーを新規に購入予定である。
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