2012 Fiscal Year Research-status Report
フェノール酸化によるヒドロキノン高選択製造のためのチタノシリケート触媒の開発
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23760741
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
稲垣 怜史 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90367037)
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Keywords | グリーンケミストリー / 固体触媒 / 酸化反応 / 形状選択性 |
Research Abstract |
本年度はフェノール酸化におけるTi-MCM-68でのヒドロキノン高選択性発現の理由を明らかにする研究を進めてきた。 フェノールの酸化でのヒドロキノンへの選択率を比較すると,TS-1ではヒドロキノン/カテコール比=1.0~1.5程度であるのに対して,Ti-MCM-68ではヒドロキノン/カテコール比>4.0以上という結果が得られている。Ti-MCM-68でのヒドロキノンの高選択生成の理由は,MSE構造中の一次元12員環ミクロ孔構造に由来する“形状選択性”であると考えている。これを確かめるためにまず,12員環ミクロ孔内でフェノールの酸化が進行していることを確認した。具体的には,脱AlしたMCM-68に対して,(1)嵩高く12員環ミクロ孔に入ることができない大きさである,triphenylsilyl chloride (TPSCl)により外表面シラノールの選択的な修飾,(2)TiCl4蒸気によるTi導入処理,(3)高温加熱(焼成)によるphenyl基の除去,を順次行い,ミクロ孔内のみTi修飾されたTi-[ ]-MCM-68-calを得た。調製したTi-[ ]-MCM-68-calでフェノールの酸化を行い,通常の手法で調製したTi-MCM-68での反応結果を比較したところ,同等の酸化活性が得られたとともに,より高いヒドロキノン選択率(>90%)を示すことがわかった。この事実から,12員環ミクロ孔内で“形状選択性”が発現していることが裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時には,本年度,Ti-MCM-68触媒でのヒドロキノン高選択性の発現理由について検討することを計画していた。本年度の成果としてTi-MCM-68の調製手法を制御することで,外表面にTi活性点がなく,ミクロ孔内のみにTi活性点が存在するTi-MCM-68を得ることができ,またこのチタノシリケートを触媒として使用した際に,高いヒドロキノン選択性を示した。これらのことから,Ti-MCM-68の12員環ミクロ孔内でヒドロキノンが糧コールよりも有利に生成することをつきとめ,高選択性の発現理由を明らかにすることができた。 上記のとおり,本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
先の2年間の成果を受けて最終年度では,12員環ミクロ孔の細孔次元の影響を検討する際に,細孔構造の異なるチタノシリケートを調製して比較する。 三次元12員環ミクロ孔からなるTi-betaでフェノール酸化を行うと,反応開始直後にフェノールの逐次酸化・重合が進行してタールが生成し,ミクロ孔を閉塞してしまうことがわかっている。Ti-MCM-68では12員環ミクロ孔が一次元であるため,フェノールの逐次酸化が制約されるため,タールが生成せずに高いヒドロキノン選択率が得られると考えている。この考察に基づくとTi-ZSM-12でも同様に高いヒドロキノン選択率が得られると予想できるが,Ti-ZSM-12では一次元12員環ミクロ孔しかないので,フェノールとH2O2がミクロ孔内に入る拡散ルートが同じとなってしまうため,Ti-MCM-68に比べて酸化活性は高くなることはないと推測している。また10員環ミクロ孔のみからなるTS-1では,ミクロ孔内でのフェノール酸化よりも外表面での酸化が優先的に起こるため,ヒドロキノン選択性が1.0~1.5程度と低くなってしまうと考えている。これらの予想を検証するために,上述の細孔構造の異なるチタノシリケートでのフェノールの酸化を実施し,細孔構造と生成物の選択性について総合的に検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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