2011 Fiscal Year Research-status Report
自律型海中ロボットによる熱水地帯の精密画像観測システムの開発
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23760778
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中谷 武志 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究副主任 (00581753)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自律型海中ロボット / 海底熱水地帯 / 画像観測 |
Research Abstract |
本研究は、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)の更なる知能化によって、海底熱水地帯の広範囲かつ精密な画像観測を実現することを目指している。各種の学術的調査や、海底資源開発の議論に用いるための定量的なデータを取得することを目的とし、熱水チムニーが点在する海域での全自動観測活動を行うための「AUV のナビゲーション手法」、「3 次元画像モデルの取得方法」、「取得データの自動処理手法」までを含めたトータルとしてのシステム開発を行う。H23年度は、上記した3つの要素技術の開発を行った。まず、「AUV のナビゲーション手法」として光切断法を用いた測距センサと、自律航行制御プログラムを開発し、チムニーに正対した状態で一定距離を保ちながら全自動で周回する技術を開発した。次に、「3 次元画像モデルの取得方法」として、チムニーの3次元形状を色付きでスキャンできる高精度な3次元スキャニング装置を開発した。そして、「取得データの自動処理手法」として、異なった角度からスキャンしたチムニーの3次元形状を、繋ぎ目なく張り合わせるソフトウェアを開発した。最後に、AUV"Tuna-Sand"(東京大学,2007年開発)を用いた実験を行い、開発した要素技術の総合的な有効性を検証した。水槽で行った実験では、チムニーを模擬した塩ビパイプ(直径30cm,長さ3m)を底に設置し、AUVにその周囲を全自動で航行させた。そして、後処理によって塩ビパイプの3次元画像モデルを構築することに成功した。得られたモデルの断面は真円度が高く、また繋ぎ合わせ面も滑らかであり、本システムの実用性の高さを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度は、提案するシステムを実現するために、「研究実績の概要」にて上記した3つの要素技術の開発を行った。なお当年度は、平らな地形に円筒形の熱水チムニーが点在する海底環境モデルを想定して研究を進めた。そして、水槽試験においてチムニーに見立てた塩ビパイプの3次元画像モザイクを構築することに成功し、手法の有効性を示すことが出来た。H24年度に計画している実海域での実証実験での成果が期待される。交付申請書に記載した「研究の目的」と照らし合わせると、当年度の計画よりもやや進捗が良いと自己評価している。H24年度は、H23年度の成果を踏まえ、傾斜地形に存在する熱水地帯や、円錐形のチムニーや密に林立したチムニー群など、より複雑な地形環境を想定して研究を進める計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、H23年度の成果を踏まえ、各要素技術のアルゴリズムやハードウェアの改良を行う。また、実海域実験として、海洋研究開発機構の研究船「かいよう」を用いた研究航海が採択されており、H24年10月22日~31日(KY12-13研究航海)の日程で、海底熱水地帯の存在が知られているスミス海盆にて実験を行う計画を立てている。なお、当年度も東京大学の協力を得てAUV"Tuna-Sand"を用いて実験を行う。要素技術については次の項目を実施する。●傾斜地形のチムニーへの対応傾斜地形に存在する熱水地帯や、円錐形のチムニーや密に林立したチムニー群への対応するために行動制御手法のアルゴリズムの改良を行う。● 3次元モデルの構築手法の改良3次元形状のずれに関しては、異なる時刻に撮影された画像間で特徴点の関係を割り出してカメラの位置関係を推定し、位置補正に使用する手法についても検討を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、H23年度に開発したシステムの改良を進め、実験によってその実用性を検証する。また、最終年度でもあるため、そのまとめとして成果発表を積極的に行う。主な研究費の使用目的は次の3つである。<(1) センサとAUVへの実装> H23年度に開発したシステムを更に改良するため、高出力のシートレーザー、高解像度・高感度のビデオカメラを購入する(光の減衰が大きい水中環境においては、高出力・高感度であることが求められる)。また、その実装のために耐圧容器, 水中ケーブル, コネクタ,電子部品, CPUボードと内部配線作業が必要となる。<(2) 水槽・実海域実験>実験にあたって、実験場所までの機材の運搬費、旅費が必要となる。<(3) 研究成果の報告> 成果発表および情報交換を行なうために国内外の学会に参加する。使用時期としては、H23年度の研究成果を踏まえて、システムの詳細設計を行ったのち、なるべく早い時期に(1)で示した必要な機器の購入を行う。次にその有効性を検証するための「(2)実験」を実施する。「(3)研究成果の報告」については、H23年度の成果発表を含め、適宜実施することを考えている。
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Research Products
(2 results)