2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760779
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村山 英晶 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361502)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 荷重同定 / 光ファイバセンサ / 分布計測 / FBG / OFDR / 逆解析 / 構造ヘルスモニタリング / ひずみ |
Research Abstract |
船体構造の安全性・信頼性向上および長寿命化を目的とし,広範囲の効率的なひずみ測定を可能とする分布型センサを用いて船体構造に負荷される荷重を逆解析によりリアルタイムに推定し,船体各部の応力を再構成する手法に関して研究する.船体構造へのさらなる適用性を高めるため次の課題が挙げられる.(1)動的問題への適用,(2)湾曲面・複数面への適用,(3)局所的な荷重やタンク内圧など内荷重への適用,(4)実験的な検証,(5)残存強度・寿命予測手法との連携,である.本年度は以上の5つの課題のうち,(2),(3),(4),(5)に取り組み,分布型光ファイバセンサの情報をもとに,湾曲する面および複数面を持つ構造に負荷される局所的あるいは分布的な荷重・応力を逆解析によりリアルタイムに推定・再構成し,さらに各部位の残存強度・寿命予測を可能とする手法の研究を行った.まず対象を宇宙航空開発機構のCFRP製の航空機翼ボックスとした.全長6mのスキン・ストリンガー構造で,当該研究者らによってひずみ計測用の光ファイバセンサが上下・内外の湾曲面(計4面)に設置され,片持ちはり形式の構造試験における測定実験がなされていたため,(2)~(5)の検証に用いることができるのが選定の大きな理由である.まず構造試験における膨大な測定データを処理し, FEMの解析結果と比較した.300点近い離散的なひずみ測定,および応力集中部位の分布測定で,きわめてよい一致を示し,光ファイバセンサの有効性を示すことができた.また,荷重同定の結果も概ねよい精度を示したが,センサが設置されていない固定端付近の同定精度が悪い結果となった.しかし,シミュレーションにより,センサの追加によって精度向上が期待できることが分かった.さらに,同定された荷重を用いてシミュレーションを行い,高い精度で構造全体の応力を再構成できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究者が提案・研究を進めている手法,すなわち構造物内で広範囲にひずみの分布計測が効率的に可能な光ファイバセンサを用い,そのひずみ計測結果からFEMモデルと逆解析手法をベースとして荷重同定を行う方法について,船体構造の安全性・信頼性向上および長寿命化を目的として,本研究では5つの課題,(1)動的問題への適用,(2)湾曲面・複数面への適用,(3)局所的な荷重やタンク内圧など内荷重への適用,(4)実験的な検証,(5)残存強度・寿命予測手法との連携,を設定した.本年度は,湾曲面・複数面を持つ翼ボックスを対象に,実験およびシミュレーションによって当該手法の適用性を検証し,(2),(3),(5)を達成した.また,(3)における局所的な荷重の同定が精度よく行われることをシミュレーションおよび実験によって確認したが,分布荷重との同時同定は来年度以降の課題となる.また(1)については,本年度の実施を予定していたが,より重要な実験的な検証を先行して実施したため,次年度に実施することとした.最終年度に実施予定であり,静的な荷重の同定に限定されているが,当該手法の適用性を示すうえで最も重要であった(4)の実験的な検証ができたことで,現在までの達成度は「当初の計画以上に進展している」と言える.現在,成果を学術論文として投稿予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で設定した課題のうち,(1)動的問題への適用,(3)局所的な荷重やタンク内圧など内荷重への適用,について主に研究を進める.動的問題に適用できるよう二つの改良手法について検討する.一つは,ひずみ情報を得るセンサ以外に加速度センサと合わせて船体運動を推定する.すなわち,上記のひずみと荷重の関係式に慣性項が加わり,運動による変形と外力による変形を分離して考えることになる.もう一つは,これまでひずみと荷重の関係式は静的荷重のみで扱われたが,動的応答を含めて逆解析が可能な形で定式化する.動的応答はこれまでと同じようにFEMで求める.計測システムの観点からは,センサの追加が必要ないこと,上述したように分布型光ファイバセンサの動的計測に成功したことも踏まえると,後者のほうが好ましい.また,後者のほうがFEMによる事前の計算量が増加するが,計測値を得た後の処理はこれまでの手法とほぼ同様の手順をとることが可能で,リアルタイム性にも優れると予測している.また,局所的な荷重同定が精度よく可能であることが確認できたので,局所的な荷重および分布荷重の同時推定をシミュレーションによって検証する.対象モデルは初年度用いた翼ボックスとする.さらに,(2),(4),(5)についてより深い検討および整理を行う.本手法の共同開発者であるJAXA研究員と情報交換をしながら,検証には多くの計算を必要とするため大学院生と協力して研究を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では,次年度(最終年度)は実験による検証を予定していたが,JAXAが実施した翼ボックスの構造試験によって本研究の目的に合致した検証ができたため,最終年度は主にシミュレーションによる解析手法の改良(動的問題への適用)と局所荷重および分布荷重の同時推定を行う.したがって,当初予定していた実験用のセンサ,材料,治具などではなく,解析に必要なソフトウエアおよび計算機の購入に充てることとする.また,大学院生による研究補助,および成果発表のための旅費に使用する.具体的には, 設備備品費として,CAD・FEMモデル作成用PC(1台×\200,000),FEM解析用PC(1台×\350,000),消耗品費として,解析用ソフトウエアMATLAB(350,000),研究補助(\100,000),国内旅費(\50,000),外国旅費(\150,000)とする.
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Research Products
(3 results)