2012 Fiscal Year Research-status Report
熱水性金鉱床の生成プロセスの可視化とレアメタル資源開発への応用
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23760794
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
米津 幸太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90552208)
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Keywords | 金鉱床 / 希土類元素 / レアメタル / 実験地球化学 / 可視化 |
Research Abstract |
熱水性金鉱床は地下深度数百メートルかつ過去の熱水活動の産物であるため、直接観察が容易ではなく、現状では過去に形成された含金石英脈と現代の熱水より、鉱床が形成された当時の化学的・物理的状態を地質・鉱物学的手法によって推測している。そこで、その現在、鉱床生成の現場を見ることのできない鉱床の形成プロセスを室内実験で再現し、人工的に金鉱床(含金石英脈)を形成、すなわち可視化を目指すことで、新たな知見を加えた熱水性金鉱床の生成モデルを提案することを目的とした。 そのためのアプローチとして、24年度は現在においても熱水活動が活発である地熱発電所の熱水とそこから沈殿し、配管に付着したシリカ質沈殿物(含金)に加えて、硫化物沈殿物を模擬金鉱床試料として採取し、その中の希土類元素を含む微量元素のICP-MSによる定量分析、放射光XAFSを用いた金の化学状態分析、溶存種のスペシエーションのモデリングを中心に行った。その結果、実試料中での希土類元素を含む微量元素のバルクでの定量や酸化還元状態や温度、pHなどのパラメータと金の化学状態の同定、溶存種の推定に成果を得た。 また、高温高圧下での予備実験や装置設計・改良を行うとともに、既存の市販マイクロウェーブを活用して、鉱液に見立てた熱水を加熱・沸騰させ、蒸発させることで濃縮・沈殿物の生成を行う実験を最大250度までで試み、模擬熱水からの沈殿のタイミングの考察を行いながら、目的の条件から目的の条件変化を導くことに一定の成果を得た。同一組成の熱水においても、初期温度あるいは温度差・圧力差の差異による沈殿挙動の違いによる希土類パターンへの影響などを系統的に調べることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再現実験の反応系の設計、実験条件の設定と目的通りに実験が進んだかの検討にまだ試行錯誤的な部分があるため、部分的に計画の遅れはみられるものの、系統だった実験により、金鉱床の生成条件と希土類パターンの間の相関を確認することができた。 また、実試料を用いた実験では、金鉱床の生成過程のナチュラルアナログとみなせる地熱発電所で得られる熱水とシリカ質沈殿物の両方を採取したことに加え、硫化物を多く含む試料、炭酸塩を多く含む試料、シリカシンターやトラバーチンと呼ばれる熱水が地表に到達して、その場で沈殿した試料も採取・分析できたことから、さまざまな希土類パターンの解釈が可能になるなど、次につながる成果も出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、自然界で採取した室試料での実験と模擬実験試料での実験の間をつなぐ作業が必要となる。そのうちの1つとして地化学計算ソフトを用いたモデリングが1つ大きな役割を果たすと考えており、その習熟と計算も併せて必要となる。 高温実験ではさらに系統だった実験を数多くこなし、容器の設計の試行も行いながら、金鉱床の生成プロセスの解明に近づけていったり、そのほかに熱水性鉱床で産出される元素への応用や、有用な地化学反応を用いた再資源化などの今後につながる知見も併せて得られるようにする。そして、実験、分析、解釈、公表の一連の活動を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は実験、分析、公表にバランスよく使用するが、反応容器装置と地化学計算ソフトのほうに重点的に使用する予定である。これまで既存物をうまく利用することで、装置費を抑えてきたが、25年度は新設・改良のために装置のほうへまずは研究費を配分する。また、実試料と高温実験の橋渡しをさせるための地化学モデリングにはソフトウェアを用いるが、その習熟が研究の成功のカギとなるので、その部分にも研究費を充てたい。さらに、研究全体のバランスを保つために学内分析センターの利用代や放射光実験などの外部での分析旅費、研究成果公表のための旅費・印刷費にも使っていく予定である。
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Research Products
(27 results)