2011 Fiscal Year Research-status Report
輝尽発光を利用したシングルイオンヒットのリアルタイム照射位置検出システムの開発
Project/Area Number |
23760837
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横山 彰人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究員 (10532088)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シングルイオン / 発光検出 / イオン注入 |
Research Abstract |
単結晶サファイアに炭素を添加したAl2O3:Cの極めて高感度な輝尽発光(Photostimulated luminescence; PSL)特性に着目し、1個のイオンに対して充分な発光強度を有する素子開発と、発光検出装置を組み合わせたリアルタイム照射位置検出システム開発を3年間の目的とした。蛍光素子に関しては、Al2O3:Cと同様にPSL蛍光中心を形成するAl2O3:Euを、注入量や層の厚さを変えて製作した。注入量については、1平方センチメートル当たり13~16乗の範囲とした。また注入層については、イオンの加速エネルギーを変えることによって、1層(350keV)、2層(350、250keV)、3層(350、250、150keV)を用意し、注入後800℃で1時間アニール処理した。これらの素子を輝尽発光と同程度の発光量といわれるフォトルミネッセンス(Photoluminescence: PL)により測定した結果、3層の各々に16乗個注入したものが最もPL強度が大きかった。また、同素子のアニール温度を500℃~1000℃まで100℃間隔で処理したものに対するPL測定では、600℃のピーク強度が最大となることがわかった。発光検出システムについては、冷却CCDカメラ、イメージインテンシファイア、長距離レンズで構成し、感度を測定する実験を行った。ここでは、サイクロトロンにおけるシングルイオンヒット実験で利用される260MeVの7価のネオンビームが生物細胞と固体飛跡検出器を通過した後の線エネルギー付与と等しくなるように、タンデム加速器の15MeVの酸素ビームを選択した。実験の結果、ZnS:Agシンチレータでは数cps、3層注入のAl2O3:Euでは200cps以上の照射によって、それぞれ発光が検出できた。これにより発光検出装置は、シングルイオンの検出に充分な感度を有することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、単結晶サファイアに注入するイオンの個数、注入後のアニール温度や時間をイオン照射による発光検出実験から明らかにすること及び発光検出装置の構築であった。イオンビーム照射による発光検出実験、及びPL測定における発光特性から、素子に関しては発光強度が最大となるイオン注入量と、アニール温度を決定できた。また発光検出装置については、シングルイオン検出に必要な感度を有するものが構築できた。以上から、研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続いてイオン注入による蛍光素子の開発と発光検出実験を行う。具体的にはイオン注入後のアニール処理における時間、目的温度までの昇温時間等を調整する。検出実験に関してはイオンビーム誘起発光、及びイオンビーム照射後の素子の輝尽発光検出実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
素子開発に必要なサファイア基板や発光検出実験に必要となる光学フィルター等の消耗品の購入、及び学会発表における旅費に使用する。
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