2011 Fiscal Year Research-status Report
革新的熱流体シミュレーションによるソーラー水素製造の高効率化に関する研究
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23760844
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
櫻井 篤 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20529614)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 太陽エネルギー / 資源生産 / 水素 / 伝熱 / シミュレーション |
Research Abstract |
近年,申請研究者の属する新潟大研究チームでは高効率化・大型化に有利な「反応性セラミック粒子による内循環流動層式ソーラー水熱分解器」を開発している。さらに反応器の設計改良と大型化で熱損失を軽減し,エネルギー効率を極限まで高める研究開発が必要である。本申請課題では,内循環流動層式ソーラー水熱分解器内における対流・ふく射・化学反応が共存する熱流体現象を解明し,熱流体-化学反応シミュレーションモデル開発を行う。これにより水熱分解器の高効率化・大型化設計の指針とすることを目的とする。今年度は下記の研究成果を得た。1)ふく射輸送解析は膨大な計算量を必要とするために,流体力学モデルとの結合は非常に困難であった。そこで,球面調和関数展開法による高速ふく射輸送解析モデルを応用した。この計算方法は,他の手法と比べて圧倒的に高速であり、太陽光が多重散乱を起こす流動層ソーラー水熱分解器に最適な手法であることを見出した。2)流動層内は,固体と気体が共存する固気二相流である。この固気二相流モデルは,体積分率法を採用することで高密度流へと展開することが可能となる。現時点では、化学反応までは含まれていないが、上記のふく射輸送モデルと連成することにより、内部の流動・温度場に関するシミュレーションモデルの基礎を作成した。3)ふく射・熱流体現象モデルの最適化を行うにあたって粒子の速度分布,温度分布を測定することは重要である。可視化実験装置は,ソーラー水熱分解器をモデル化し,内循環型の二次元的な流路を作製した。粒子の運動はハイスピードデジタルカメラによって撮影し,上記の計算結果と比較することにより、予測モデルにフィードバックすることが出来た。4)以上の知見を基に新型ソーラー反応器である内循環流動層反応器を大幅に改良した。この新型システムによる反応器を国内特許として出願した(特願2012-018199号)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度における研究目的の達成度は以下の通りである。1)ふく射輸送モデルの改良:球面調和関数展開法による高速ふく射輸送解析モデルを応用し、太陽光が多重散乱を起こす流動層ソーラー水熱分解器に最適な手法であることを見出した。また、粒子の光物性などに関するデータを取得することが出来たため、この研究目的はほぼ達成されたと考えられる。2)固気二相流・化学反応解析モデル:流動層を解析するための二相流解析法の基礎を作成した。上記の研究目的で作成したふく射輸送モデルと連成することにより、内部の流動・温度場に関するシミュレーションモデルの基礎を築いたものの、可視化実験との比較検討をこの時点で重点的に行う必要があったため、化学反応モデルまでを含めることは時期尚早と判断した。よってこの研究目的についてはやや遅れている。3)可視化実験装置の製作・実験:可視化実験装置は,ソーラー水熱分解器をモデル化し,内循環型の二次元的な流路を作製した。粒子の運動はハイスピードデジタルカメラによって撮影し,上記の計算結果と比較検討を行い、モデルの修正に役立てることが出来た。本年度の可視化実験では、化学反応モデルまでは含まない予定であったので、本実験の目的は概ね達成されたと考えられる。一方、粒子追跡に関しては安価な民生用ハイスピードデジタルカメラで代用しているため、測定精度の面ではまだまだ不安が残っているので、今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
可視化実験装置の製作・実験において、まず室温レベルの実験から開始したところ、石英ガラスのような高価な材料を使わずに安価なアクリルガラスで作成出来るため、材料費が見積り額よりも少なくて済んだという状況である。後述するが、今後は高温場での可視化実験も開始するため、次年度において繰り越された資金を用いて新たに高温用可視化実験装置の製作を行う。一方、流動層内における粒子運動を追跡するためには、一般的に非常に高価な業務用ハイスピードカメラが必要であるが、今年度は室温レベルでの基礎実験を重点的に行ったため、安価な民生用ハイスピードカメラである程度代用が出来、その分の費用がかかっていない状況である。上述の通り、民生用カメラでは測定精度にまだ不安が残るため、今後はこの基礎実験を元に高温用可視化実験装置の測定精度の向上と、温度測定系の構築を次年度に重点的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
可視化実験装置の製作・実験において、今後は高温場での可視化実験も開始するため、次年度において繰り越された資金を用いて新たに高温用可視化実験装置の製作を行う。高温場での実験では高価な石英ガラス等を使用する必要があるため、初年度の製作費と比べて高額となる。一方、流動層内における粒子運動を追跡するためには、高価な業務用ハイスピードカメラが必要であるが、上述の通り、民生用カメラでは測定精度にまだ不安が残るため、今後はこの高温用可視化実験装置の測定精度の向上を目指す。また、初年度は室温レベルの基礎実験を重点的に行い、この時点でシミュレーションモデルの高性能化を目指したため、温度測定系の構築や化学反応に関する実験データを取得していない。そのため次年度は繰り越された資金を用いて、これらの測定系の高精度化、高性能化を重点的に行う。
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Research Products
(8 results)