2011 Fiscal Year Research-status Report
高山生態系の特性を利用した、送粉ネットワーク構造の解析
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23770017
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石井 博 富山大学, 理工学研究部(理学), 准教授 (90463885)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ポリネーター / ネットワーク / 立山 / 送粉 / 双翅目 |
Research Abstract |
本研究の目的は主に以下の4点である。1)送粉群集における生物間相互作用ネットワーク(以下、送粉ネットワーク)の構造を表現する適切なモデルを提示することで、送粉ネットワークの特性を把握する。2)送粉群集に特徴的なネットワーク構造が形成されるメカニズムを明らかにする。3)送粉群集の安定性評価を行う。4)キーストーン種や絶滅リスクの高い種の選定を行う上でのマニュアルを作成する。平成23年度は、このうち、1)と2)を明らかにするため、北アルプス立山の高山帯(室堂~浄土山周辺,標高2450-2830m,東西約1.6km、南北約2kmの範囲)で、訪花している昆虫の調査、及び植物の開花フェノロジーの調査を行った。これらのデータをもとに、ネスト構造モデルやモジュール構造モデル、さらにクラスター解析を用いてネットワーク構造を解析した。その結果、送粉群集を記載するモデルとして近年多用されるネスト構造は、サンプルの偏りを反映した擬似構造である可能性が示唆された。一方、モジュール構造モデルやクラスター解析によって、送粉者をいくつかのグループに、機能的に分類された。機能グループの一つは、過去の研究からも示されていた通り、マルハナバチを多く含むグループであった。一方、新しい知見として、双翅目ポリネーターも、明確に異なるグループに分けられることがわかった。このグループ分けは、双翅目の内部系統や、出現フェノロジーとは対応しておらず、グループ分けが形成される理由については、今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年分としては十分なデータ量を確保できたこと、送粉ネットワーク構造の解析から、双翅目ポリネーターの機能分化について新たな知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、引き続き立山の高山帯(室堂~浄土山周辺,標高2450-2830m,東西約1.6km、南北約2kmの範囲)で、訪花している昆虫の調査、及び植物の開花フェノロジーの調査を行う。また、新たな調査地を追加する予定である。これらのデータをもとに、引き続き送粉群集構造の解析を行うと共に、送粉相互作用網の年変動や地域差を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主体は、北アルプス高山帯での野外調査にある。このため、申請経費の多くは、野外調査に伴う経費(野外調査のための出張旅費・調査補助をする者に対する謝金)として用いる予定である。特に、主な調査地である富山県立山の高山帯は、自家用車の乗り入れが規制されている。このため公共の交通期間に頼らざるを得ず、相応の交通費が必要となる。また、採取した昆虫標本を資料として保管するため、標本箱と標本棚を購入する予定である。プラスチック器具と薬品類はサンプル(ハチや花粉など)を持ち帰るため、デジタルノギスは花や昆虫の形態測定に、マイクロキャップは花蜜量の測定に購入予定である。学会発表のための出張旅費と投稿論文の英文校閲は、研究成果を発表する上で必要なため研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)