2011 Fiscal Year Research-status Report
亜種間コンソミック系統をモデルとした生殖隔離の分子メカニズムの解明
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23770097
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
Principal Investigator |
木曽 彩子 (岡 彩子) 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (80425834)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生殖隔離 / 種分化 / X染色体 / コンソミック系統 / QTL解析 |
Research Abstract |
X染色体の遠位側半分が別亜種由来に置き換わっている亜種間染色体置換(コンソミック)系統C57BL/6J-ChrXTMSMは、雄特異的に生殖能力の低下がおこる。その原因は、遺伝的背景であるC57BL/6J系統の常染色体連鎖遺伝子と、別亜種に属するMSM系統由来のX染色体連鎖遺伝子との間で遺伝的相互作用が適切に起こらないためであると考えられる。本課題では、具体的に関連遺伝子を明らかにし、それらの分子的相互作用を解明するのが目的であるが、平成23年度においては常染色体連鎖関連遺伝子の存在領域を遺伝的解析(QTL法)により特定することができた。解析の結果、1番染色体の53Mb付近と45Mb付近にそれぞれLOD値9.1と9.8の高いピークが検出され、さらに2番染色体の68Mb付近にLOD値13.0、12番染色体の106Mb付近にLOD値5.2のピークも検出された。よってMSM系統由来のX染色体連鎖原因遺伝子は、1番、2番、12番染色体に連鎖する特定の遺伝子がC57BL/6J系統アリルであるために、本来の遺伝的相互作用が適切に起こらず、C57BL/6J-ChrXTMSM系統の表現型が引き起こされたことが明らかとなった。また現在、QTL解析の結果とマイクロアレイによる発現解析の結果より、X染色体に連鎖する原因遺伝子として精子形成期の遺伝子発現の調節に深く関わるNxf2、Nxf3、Taf7l遺伝子が最有力の候補として浮かび上がっており、BACを用いたトランスジェネシスによってその検証を行っている。これにより原因遺伝子が特定できれば、遺伝的相互作用の分子レベルでの解明に向けて加速的に前進すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画では、1番染色体上の原因遺伝子の存在領域をQTL解析により特定することを予定していたが、現時点で、当初の計画に含まれていなかった新たなQTL解析のためのマウス作製と解析を既に実施し、1番染色体のほかにも2番、12番染色体がC57BL/6J-ChrXTMSM系統の表現型に関わっていることを示すことができた。また、平成24年度計画に含まれているX染色体連鎖原因遺伝子のBACトランスジェネシスによる検証を既に実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はX染色体連鎖原因遺伝子のBACトランスジェネシスによる検証を引き続き行い、原因遺伝子を特定する。また、1番、2番、12番染色体に連鎖する原因遺伝子の候補絞り込みを、マイクロアレイなどによる発現解析やコンジェニック系統の表現型データをもとに行う。同時に、C57BL/6J-ChrXTMSM系統の精巣における減数分裂開始前の表現型解析を詳細に行い、減数分裂以前に起きていると思われる細胞周期アレストの原因を明らかにする。遺伝的解析により特定された原因遺伝子の発現を遺伝子レベル、タンパクレベルで解析し、C57BL/6J-ChrXTMSM系統の表現型が引き起こされるまでの分子メカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に、トランスジェニックマウスの作製に必要なマウスやBAC精製に必要な試薬の購入、精巣組織の表現型解析において必要な各マーカータンパクの抗体や試薬の購入に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)