2011 Fiscal Year Research-status Report
特異な性の維持機構とその進化-全く新しい性表現を持つ植物からのアプローチ
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23770100
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Research Institution | The Museum of Nature and Human Activities, Hyogo |
Principal Investigator |
布施 静香 兵庫県立人と自然の博物館, 自然環境評価研究部, 主任研究員 (30344386)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 進化 / 雄性両性異株 / 性表現 |
Research Abstract |
多くの植物は,単一個体に雌雄を備えた「雌雄同株」,あるいはどちらか一方の性しかない「雌雄異株」から集団が構成されており,雌株と両性株から集団が構成される「雌性両性異株」も珍しくない。一方,雄株と両性株から集団が構成される「雄性両性異株」は,わずかな種からしか報告されていない非常に稀な性型である。 事前調査により「雄性両性異株性」を示すと思われる植物集団が見つかった。しかも,両性株の個体は雄花と雌花が同時につくのではなく,雄花が散った後に雌花が咲くといった性の時間的変化があることも示唆された。このような性表現の植物は極めて珍しく,植物の性の進化を考える上で非常に興味深い事例である。そこで,本研究の第一段階として,初年度はこの植物の性表現の実態を調査した。 調査対象の植物はミカン科のカラスザンショウと,その近縁種であるイヌザンショウとし,連日の現地調査により両種の比較を行った。その結果,次のことが明らかになった。(1) カラスザンショウ・イヌザンショウとも雄株には雄花をつけ,両性株には雄花と雌花をつけるタイプの雄性両性異株であった。(2) 両種とも,両性株では雄花が咲いた後に雌花が咲くという性の時間的差異が確認された。なお,個々の雄花の寿命は1日であるが,1つの花序に多数の雄花がつき,それらが順に咲くため,1つの花序が雄の性を示す期間は数日間だった。 (3) 両種とも,同一個体内の花序間における開花ステージの変化はほぼ同調しており,集団内における開花ステージの変化は非同調であった。また,個体の性は1日で完全に変化してしまう場合があった。(4) 両種とも,雄個体の方が両性個体よりも雄としての期間が長く,花粉提供に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,雄性両性異株性を示す植物としてカラスザンショウの調査のみを予定していたが,近縁のイヌザンショウについても雄性両性異株性を示すことが明らかになり,特異な性の維持機構とその進化を研究する上で,当初の計画以上に基礎データの集積が行えた。一方で,雄株と両性株の繁殖成功度の比較は遅れているため,全体の評価としては上記区分となる。
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Strategy for Future Research Activity |
カラスザンショウとイヌザンショウについて,雄株と両性株の繁殖成功度の比較(花粉間競争,父系解析など),雄性両性異株性の安定性評価,性比の地理的変異を明らかにし,雄性両性異株の進化や維持機構の解明に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はイヌザンショウの性表現に関する調査が加わったこともあり,近隣調査地における野外調査を中心に推進したが,次年度は,カラスザンショウとイヌザンショウの複数の調査地にける野外調査に加え,マイクロサテライト解析による繁殖成功度の比較を推進する。そのため,本年度使用予定だった研究費の一部と次年度に請求する研究費を合わせて,次年度の研究を推進する。
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Research Products
(2 results)