2011 Fiscal Year Research-status Report
非定型カドヘリンの細胞外領域リン酸化の生理機能の解明
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23770139
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石川 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (00398819)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / カドヘリン / ゴルジ体キナーゼ / リン酸化 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
非定型カドヘリンFatは、ショウジョウバエの発生において組織の成長と平面細胞極性を制御する。Fatは細胞外領域にカドヘリンドメインの繰り返し構造を有するが、そのうちのいくつかのカドヘリンドメインに存在する特定の箇所のセリンは、ゴルジ体キナーゼFour-jointedによりリン酸化される。我々はこれまでに、Four-jointedによるFatのカドヘリンドメインのリン酸化は、Fatの機能を調節することを生化学的に明らかにした。本研究では、Fatの生体内での機能発現に必要なカドヘリンドメインのリン酸化部位を同定することを目的とした。fat遺伝子を含む約40 kbのBACクローンは、fat突然変異体が示す増殖および平面細胞極性の異常を救済することができる。そこで、調べた限り全ての動物種間で保存されており、さらにFjの最も良い基質となる3番目のカドヘリンドメインのセリンを、リン酸化を受けないアラニンに置換した変異型fatのBACクローンを作成した。このBACクローンをショウジョウバエ卵にマイクロインジェクションし、形質転換体を得た。このトランスジェニックショウジョウバエがfat突然変異体の表現型を救済できるか交配実験により調べた。その結果、変異型fatのBACクローンは、fat突然変異体の致死性を救済したものの、成虫においてfat突然変異体の表現型が観察された。この結果から、Fatの3番目のカドヘリンドメインのリン酸化は、ショウジョウバエにおいてFatの正常な機能発現および発生に必要であることが分かった。種間で保存されたFatのカドヘリンドメインのセリンは全部で3箇所存在する。3箇所のセリン全てをアラニンに置換したBACクローンの作製およびトランスジェニックショウジョウバエの作出を完了した。現在得られた形質転換体によるfat突然変異体の救済実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、組織の成長と平面細胞極性を制御する非定型カドヘリンFatの構造的特徴である、1)細胞外カドヘリンドメインがゴルジ体キナーゼFour-jointedによりリン酸化されること、2)細胞外に長大なカドヘリンドメインの繰り返し構造を有すること、に着目してその生理的意味を明らかにすることを目的としている。ショウジョウバエを用いたin vivoの実験において、種間で保存されているFatのカドヘリンドメイン3箇所のうち1箇所のセリンにアミノ酸置換を導入したところ、Fatの機能は不完全となった。この結果からFatカドヘリンドメインのセリンのリン酸化は生体内において必要であることが分かった。さらに3箇所全てのセリンをアラニンに置換したBACクローンの作製およびトランスジェニックショウジョウバエの作出が完了し、現在交配実験を行っている。これらの実験により、Fatの細胞外カドヘリンドメインのリン酸化の生理的意味を明らかにしつつあると言える。また、カドヘリンドメインの数を減らしたFatをショウジョウバエに発現させるためのトランスジェニックショウジョウバエを作出した。これらからin vivoの実験については順調に進展していると自己評価した。一方で、in vitroの実験については、東日本大震災の影響もあり、現在準備中の段階である。以上から、全体として本研究は、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ショウジョウバエを用いたin vivo救済実験において、3箇所のセリンをアラニンに置換した変異型fatのBACクローンでfat突然変異体の表現型を救済できなかった場合、この変異体fatのBACクローンのアラニンをひとつずつセリンに戻して救済実験を行うことにより、生体内で必要なFatのカドヘリンドメインのセリンを同定する。3箇所のセリンをアラニンに置換した変異型fatのBACクローンでも依然としてfat突然変異体の表現型を救済できる場合、その他のカドヘリンドメインのセリンにも変異を導入する。カドヘリンドメインの数を減らしたFatをショウジョウバエに発現させることにより、生体内で必要なFatのカドヘリンドメインの数を同定する。in vivoあるいはin vitroの実験で明らかにした、Fatの機能を調節するカドヘリンドメインのセリンのうち、最も効果の高いセリンのリン酸化を認識するFatのリン酸化抗体を作製し、発生中のショウジョウバエ組織のFatのカドヘリンドメインのリン酸化の状態を可視化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
組織の成長と平面細胞極性を制御する非定型カドヘリンFatの生理的意味を明らかにすることを目的とした研究を遂行するにあたり、ショウジョウバエを用いた実験のためにショウジョウバエの餌、生化学的実験のために試薬類、プラスチック器具類を物品費(消耗品費)として購入する。抗体作製のためのペプチド合成およびポリクローナル抗体作製費が必要である。結果を取りまとめて成果の発表を行うための旅費が必要である。ショウジョウバエの飼育および交配実験を行う補助者の人件費・謝金が必要である。通信費などのためにその他の経費が必要である。
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