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2012 Fiscal Year Research-status Report

中性子結晶解析による構造揺らぎを含めたDNAの水和構造の解明

Research Project

Project/Area Number 23770176
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

茶竹 俊行  京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (30383475)

KeywordsDNA / 揺らぎ / 水和構造 / 中性子
Research Abstract

本研究の目的は、DNAの水和構造について揺らぎを含む詳細な立体構造の解析を中性子回折により実現することである。実験手順は(1)高品質試料の作成、(2)中性子実験、(3)構造解析の三つのパートから成り立っており、平成23年度では(1)と(2)について、中性実験に有利な重水素化DNAの作成と最新中性子回折計を用いた予備実験を行った。平成24年度はこれを発展させて、(2)と(3)について軽水型Z-DNAの中性子回折実験とZ-DNAの特殊な水和、金属和状態の構造解析を行った。以下、詳細を記す。
(2) DNAの中性子回折実験
今回の研究では、DNAの溶媒として重水と軽水の二種類を用いて中性子データを収集して、重水素と軽水素の間の中性子散乱長の差から水素原子の位置を決定することを目標の一つにしている。Z-DNAについては重水結晶の中性子データを既に収集してるため、軽水結晶のデータを収集すれば水素原子の決定が可能となる。昨年度は、大型のZ-DNA軽水結晶を作成に成功し、この結晶を用いて中性子回折実験を行った。回折斑点は最高で1.85オングストローム分解能まで達し、本サイズで中性子データの収集が可能であるが確かめられた。しかしながら、結晶にヒビが入っていたため、中性子データの収集はより高品質な結晶を再作成した後に行うことになった。
(3) DNAの構造解析
中性子解析は行わなかったが、その前段階であるX線解析からDNAと金属イオンとの間の相互作用について新しい知見を得ることができた。前例が殆どない高塩型Z-DNAの解析から、水分子だけでなくイオンを含めた解析を行いDNAのイオン和についての新しいモデルを構築した。また逆に極低塩型Z-DNAについては初のX線結晶解析に成功し、新しいタイプの構造揺らぎを発見した。これらは, 中性子実験のサンプルとして採用する予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

24年度の目標は、高品質試料の(1)重水素化DNAの大量合成、(2)大型DNA結晶の作成と(3)DNAの中性子実験であった。(1)では重水素化DNAの大量合成には至らなかったが、(2)については1立方mmの大型DNA結晶の作成に成功し、(3)のDNAの中性子実験を行うことが出来た。中性子実験ではZ-DNAの軽水型結晶についてJ-PARCの新型中性子TOF回折計を利用することにより、1.85オングストローム分解能の中性子回折斑点まで確認することが出来た。また、中性子解析の前段階であるX線解析により、Z-DNA構造研究における課題の一つである高塩状態および低塩状態の金属イオン及び水分子の酸素原子部分の原子位置を決定して、Z-DNA構造について新知見を得ることに成功している。
重水素化DNAの大量合成に至らなかった点はマイナス要因。
大型結晶の作成に成功した点と副次的にX線解析から新知見が得られた点はプラス要因。
中性子実験で中性子データ収集の直前まで達成できたことは概ね予定通り。
以上を総合的に判断して、24年度は研究目的の達成に向けておおむね順調に進展していると結論できる。

Strategy for Future Research Activity

研究の3つのパートである(1)高品質試料の作成、(2)中性子実験、(3)構造解析について、それぞれ説明する。
(1) 高品質試料の作成: 重水素化DNAの量産化を行い、完全重水素化DNA結晶の作成を進める。また、昨年度に作成した軽水型Z-DNA結晶の品質改善を行い、中性子データの収集可能な結晶を作成する。
(2) 中性子実験: 重水素-軽水素コントラストによる水素原子位置決定を第一目標として、軽水型Z-DNA結晶の中性子データの収集を行う。また、完全重水素化DNA結晶については極低温による中性子実験も視野において世界最高精度(現時点では私が過去に行った1.8オングストローム)の中性子データの測定を目指す。
(3) 構造解析: (2)の中性子実験で得られる予定の軽水型Z-DNA結晶と完全重水素化DNA結晶の回折データについて原子座標の決定を行う。既に、解析のためのプロトコールはシミュレーションと予備実験データを使用した模擬試験により前年度にほぼ作成している。中性子データが得られ次第、順次構造決定を進めていく。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

25年度の主な研究費の使用用途を以下に記す。
[消耗品費]
(1) DNA合成: 軽水型DNA (再結晶化のため)。(2) DNA結晶化: 結晶化前の精製、結晶化用の試薬および結晶化用プレート類。結晶化用試薬には重水素化化合物も含む。(3) 中性子実験: 結晶を中性子回折計に設置するための、パーツ類と消耗品。
[旅費]
中性子実験を行う茨城県J-PARCに隣接した茨城大学の量子ビームセンターで、中性子実験用の準備実験と本実験を行うために、出張を行う予定。

  • Research Products

    (5 results)

All 2013 2012

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Direct interactions between Z-DNA and alkaline earth cations, discovered in the presence of high concentrations of MgCl2 and CaCl22013

    • Author(s)
      Toshiyuki Chatake, Tomoko Sunami
    • Journal Title

      Journal of Inorganic Biochemistry

      Volume: 123 Pages: 15-25

    • DOI

      10.1016/j.jinorgbio.2013.03.004.

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 生体分子の中性子単結晶回折(第一回) 蛋白質中性子結晶学の基礎2013

    • Author(s)
      茶竹俊行、森本幸生
    • Journal Title

      日本中性子科学会誌

      Volume: 23 Pages: 81-85

  • [Presentation] 核酸科学を中心とした中性子結晶構造解析2013

    • Author(s)
      茶竹俊行
    • Organizer
      第1回Neutron in Biology研究会
    • Place of Presentation
      京都大学東京オフィス (東京都)
    • Year and Date
      20130314-20130314
    • Invited
  • [Presentation] 生体高分子の機能発現に重要な役割をもつ水分子およびプロトン化状態の直接観測2013

    • Author(s)
      樋口芳樹、 茶竹俊行、 横山武司、 山田太郎 (代表発表者: 樋口芳樹)
    • Organizer
      2012年第2回水和ナノ構造研究会
    • Place of Presentation
      新世代研究所 (東京都)
    • Year and Date
      20130223-20130223
  • [Presentation] 高塩状態で誘導されるDNA会合の研究2012

    • Author(s)
      茶竹俊行
    • Organizer
      タンパク質の異常凝集とその防御修復機構に関する研究会
    • Place of Presentation
      京都大学原子炉実験所 (大阪府)
    • Year and Date
      20121102-20121102

URL: 

Published: 2014-07-24  

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