2011 Fiscal Year Research-status Report
NMRで読み解くアミロイドの形成と分解のメカニズム
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23770193
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大橋 祐美子 独立行政法人理化学研究所, タンパク質構造疾患研究チーム, 研究員 (10422669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アミロイド / タンパク質 / 核磁気共鳴法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることであり、本年度ではモデルタンパク質として酵母のプリオンタンパク質Sup35を用い、アミロイド形成過程に着目した研究を行った。アミロイド形成のメカニズムのヒントはモノマー及び、アミロイド形成中間体であるオリゴマーに潜んでいると考えられる。そこでモノマー及びオリゴマーの揺らぎや部分構造の観察を重点的に行ったところ、アミロイド形成中間体であるオリゴマー内に、オリゴマー相互作用とは別の分子間相互作用があることを飽和移動差NMR測定により発見した。その特殊な相互作用はアミロイド内では分子間相互作用のコアとなる部分であり、そこがアミロイド形成起点である事が考えられた。 また、モノマーの揺らぎを捉えるため、15N-1H NOE測定を行ったところ、Sup35はC末端側半分に大きな揺らぎが集中しており、N末端側半分は天然変性領域と考えられている部分にも関わらず、比較的揺らぎが少なく、部分構造が存在することが示唆された。更にCLEANEX-PM測定から、ペプチド結合部のアミド水素と溶媒の水素との交換速度を見積もった。C末端側の揺らぎの大きな部分では、非常に早い交換速度が観察されたが、揺らぎの少ないN末端側にも一部、比較的速い交換速度を持つ部分を発見した。この領域はアミロイド形成に非常に重要であることが示されているアスパラギン残基が集中する部分であり、また先の飽和移動差NMR測定で見つかった特殊な分子間相互作用の位置とも一致した。 これらの結果から考えられるのは、天然変性であるはずのSup35は、N末端側に部分構造が存在し、比較的コンパクトな揺らぎの少ない構造を持っている。しかし、この部分にも表面に露出し、溶媒水素との早い交換を示す部分があり、そこがアミロイド形成の起点となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、アミロイドの形成過程と分解過程の全体像を、核磁気共鳴法を用いて、構造生物学的視点で捉えることである。本年度の研究により形成過程について、これまでに報告されていない画期的な知見を得ることに成功した。次年度から、残りの分解過程についての研究に着手することが出来る状態であり、達成度は計画どおり進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
酵母細胞内ではSup35アミロイドの分解が行われている。特にHSP104が重要であることはよく知られている。その分解過程を観察するには細胞内にあるアミロイドのスペクトルを得るのが最良の方法である。しかし、この方法の困難な点は、どのようにしてNMRで測定可能な量の15Nラベルアミロイドを酵母内に導入するかということである。申請者が考える方法は15Nラベル培地で培養している酵母にSup35を大量発現させ、その酵母に細胞外から少量のアミロイドを導入し、それを核として15NラベルSup35アミロイドを形成させるというものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は細胞内NMRを、酵母を用いて行う計画であり、次年度の研究費は15Nラベル化培地やNMRサンプル調整用の器具等、NMR測定関連の消耗品に主に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)