2013 Fiscal Year Annual Research Report
NMRで読み解くアミロイドの形成と分解のメカニズム
Project/Area Number |
23770193
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大橋 祐美子 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10422669)
|
Keywords | アミロイド / 構造多形 / 核磁気共鳴法 / 天然変性蛋白質 / 部分構造 / 揺らぎ |
Research Abstract |
本研究の目的は酵母プリオンタンパク質Sup35NMを用い、アミロイドの形成過程のメカニズムを、核磁気共鳴(NMR)測定で構造生物学的に捉えることである。前年度までの研究で主にタンパク質の揺らぎに着目したNMR測定を行った結果、アミロイド形成開始点と考えられる領域をN末端と中央付近の二箇所に発見した。本年度ではその開始点の検証及びWTにおいてN末端側の開始点が常に選択される理由の探求を行った。 まず発見したアミロイド形成開始点を検証するため、アミノ酸変異による開始点の破壊を試みた。アミロイド形成にはアスパラギン残基が重要な役割を持つと考えられる為、アスパラギンをアラニンに置換する変異を導入し、アミロイド構造の変化を確認した。中央領域は2残基置換により開始点の破壊に成功した。N末端側は比較的領域が広いため少数の置換では破壊は困難であったが、3残基置換でも部分的な開始点の破壊が見られた。この結果は、2領域がアミロイド形成開始点であるということを支持するものである。次に常磁性緩和促進NMR法を用いてSup35NMモノマーの大まかな部分構造を調べた。その結果、Sup35NMはこれまでの報告では二次構造をほとんど持たない天然変性蛋白質であるとされていたが、一部に比較的コンパクトな部分構造を持つことが示された。中央付近のアミロイド形成開始点はそのコンパクトな領域に含まれており、N末端の開始点は含まれていなかった。 以上の研究から。WTのSup35NMがN末端側の開始点を常に選択し、N末端側にアミロイドコアを作るのはこの部分構造が中央付近の開始点をマスクしている為であることが示され、アミノ酸置換によるアミロイド構造多形の誘導は部分構造の破壊や開始点への立体障害の導入によって導かれている可能性が示唆された。
|
Research Products
(1 results)