2011 Fiscal Year Research-status Report
形が制御するYapを介した細胞増殖制御の分子機構の解明
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23770236
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
和田 健一 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 協力研究員 (20525919)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | cell shape / microdomain cell culture / Hippo signal / Yap / stress fiber/F-actin / contact inhibition |
Research Abstract |
細胞間接触の影響を排除して細胞の形とYap局在変化の関連を検討するために、微小な細胞接着領域(マイクロドメイン)を用いたNIH3T3細胞の単一細胞培養を行った。30 x 30 μm以下のマイクロドメイン上では、細胞は丸い形を呈しYapは核から排出された。一方、40 x 40 μm以上のサイズでは、細胞は伸展しYapが核に局在した。また、伸展した細胞でのみ明瞭なストレスファイバーが認められたため、ストレスファイバーがYap局在制御に関与する可能性が示唆された。 各種阻害剤を用いてストレスファイバーを薬理的に破壊したところ、いずれの場合もYapの核局在が消失した。また、50 x 50 μm サイズのマイクロドメインに播種した状態でサイトカラシンDに暴露してストレスファイバーを破壊したところ、伸展状態にありながらYapの核局在が消失した。これらの結果からストレスファーバーがYap局在制御に関与していることが示唆された。 さらに、ストレスファイバーによるYap局在制御がHpo経路を介して行われるのかを調べるために、Lats2のdominant negative formの高発現によるHpo経路の阻害実験を行った。Hpo経路を阻害した状態でサイトカラシンDに暴露したところ、ストレスファイバーが破壊された状態でもYapの核局在が維持された。このことはストレスファイバー(F-actin)がHpo経路を抑制する働きを持つことを示唆する。 これら一連の実験結果から、細胞の形がストレスファイバーを介してHpo経路を制御すことでYapの局在を制御していることが明らかとなった。この研究成果は本研究課題で新しく提唱した"細胞増殖の接触阻止が細胞の形の変化に起因して生じる"という仮説を支持し今後さらに詳細な分子機構の解明に発展していくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では達成目標を二つ設定した。一つは、細胞の形の変化によるYap局在制御はHpo経路を介すのか、あるいは別の経路が存在するのか?という問題に対して明確な回答を得ること、もう一つは、Yapの局在制御の具体的な分子機構を明らかにすることであった。 マイクロドメインを用いた細胞の形の制御、ストレスファイバーの破壊、Hpo経路の阻害という一連の実験を通して、細胞の形によって増減するストレスファーバーがHpo経路を負に制御する因子として機能することを明らかにすることができた。この研究成果から、細胞の形の変化によるYapの局在制御はHpo経路を介するものである、という結論に達した。 さらに後者の達成目標に関しても、ストレスファイバーがHpo経路を負に制御するという新規知見を得たことにより、細胞の形の変化によるYap局在制御の具体的な分子機構を明らかにする上で着目する分子をF-actinを中心とした関連分子に絞りこむことができた。 これらの理由から、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究実績より、形によるYap局在制御はHpo経路依存的な分子メカニズムが存在することが明らかとなり、さらに、そこにはストレスファイバー/F-actinが関与していることを世界に先駆けて見出すことができた。今後は、F-actinが具体的にどのような分子間相互作用を介してHpo経路を負に制御していくのかを検討することで、さらに詳細に"形が制御するYap局在制御の分子機構"を明らかにしていく。 ところで、F-actinは細胞接着分子とも密接な機能的な関連が知られている。このことは、従来より提唱されてきた細胞接着に依存的な細胞増殖の接触阻止のメカニズムと、本研究課題で提唱した形に依存するメカニズムがF-actinによって統合されているかもしれないことを示唆する。そこで、上記の研究計画に乗っ取ったアプローチに加えて、F-actinに着目して細胞接触と形の変化がどのように関連しあってHpo経路に入力するのかを検討することも視野に入れ、研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的な解析装置は現有であるため、分子生物学/生化学的解析に必要な試薬類全般が主たる研究費の使用用途として計画している。しかし、【今後の研究の推進方策 等】で記載した通り、細胞接着と形の関連性の検討も想定している。この場合は、新規の微小構造を有した細胞培養システムを設計、構築する必要があり、微細加工に必要な経費も次年度の研究費の使用計画に含める。以上を考慮し、次年度研究費\1,100,000のうち、\600,000を消耗品、試薬代として、\100,000を学会参加費、\300,000を微細加工経費、\100,000をその他論文投稿費等に使用する計画である。
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