2011 Fiscal Year Research-status Report
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23770259
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
豊岡 やよい 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 助教 (20360597)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 転写因子 / Trophoblast / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究は、将来胎盤を形成する細胞系譜である栄養外胚葉(trophectoderm)細胞の分化決定機構について明らかにすることを目的としている。マウス着床前胚は当初、等価な細胞で構成されているが、胎生3日目に外側にある細胞はtrophoblastへと分化し内側の細胞は未分化なままICMとして維持され、2つの細胞系譜が作り出される。その決定様式として細胞表面からの何らかのシグナルにより胚体内の細胞が各々の位置を認識し、外側にある細胞はtrophoblastへと分化し内側の細胞は未分化なICMとして維持されるという仮説(シグナル仮説)と、細胞分化はランダムに起こり、その後trophoblast細胞は胚の外側へ、ICMは内側へと移動するのではないかという仮説(sorting説)が提唱されている。我々は何れの仮説が正しいのかを検証するため、trophoblast細胞の分化決定を担う転写因子Cdx2の着床前胚における発現を経時的に観察する計画を立てた。具体的にはCdx2の発現をEGFPの蛍光で観察することのできるマウス系統を樹立し、その着床前胚を用いてライブイメージング観察を行った。その結果、trophoblast/ICMへの運命決定が起こる時期とされている桑実胚においてCdx2は外側の細胞においてのみ強く発現していることが分かり、どちらかというとシグナル仮説が真実に近いのではないかと今のところ考えられる。現在、Cdx2-EGFPマウスと全ての核が赤色の蛍光で観察できるROSA26-H2BmCherryマウス系統や、細胞膜がEGFPの蛍光で観察できるマウス系統を掛け合わせ、Cdx2の発現と核や細胞膜をも同時に観察することで細胞の系譜をより明確に追尾できるマウス系統を樹立観察し、このステージにおける細胞分化決定機構について、明確かつ信頼性の高いデータを作製したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trophoblast細胞の分化決定機構に関する2つの仮説についての検証という主目的は、現在手持ちのトランスジェニックマウス系統を使用して十分達成出来る見込みであり、ほぼ計画通りの進行状況であると考えられる。さらなる知見の積み重ねを目指して、Cdx2の発現と細胞の移動、細胞分裂方向との関連など、様々な角度からのデータを取得していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Trophoblast細胞の分化決定機構に関する2つの仮説についての検証を行い、現在までの観察結果から、シグナル仮説が現実に近いモデルであるという結論で論文をまとめる意向である。近年、桑実胚期のマウス胚において、少数ではあるが外側から内側に押し込まれる細胞が存在することを、我々を含めた幾つかの研究グループが確認し、注目している。そのような細胞の移動は、内側と外側の細胞数比の調節のために行われると推測されているが、その分化運命が前もって内側の細胞(=ICM)へと決定されているのか、一度はtrophoblast細胞に運命決定された細胞が後に運命転換をさせられるのかということなどが議論の対象になっている。Cdx2遺伝子の発現を指標として、対象となる細胞がCdx2を発現しtrophoblastの状態へと一度は向かうのか、あるいはそもそもCdx2を発現しておらず内側の細胞になる運命であるがゆえに内側へ押し込まれるのか、といったことについて検討できるかもしれないと考えており、細胞の動きとCdx2の発現を併せて観察することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に胚培養用培地、培地添加物、プラスチック製品、タイムラプスデータの保存用の外付けハードディスクなど、消耗品類の購入に使用する予定である。
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