2012 Fiscal Year Research-status Report
蛍光標識法を用いた光合成ウミウシ体内における植物由来オルガネラの動態解析
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23770276
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
松尾 充啓 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (70415298)
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Keywords | 光合成ウミウシ / 盗葉緑体 / 葉緑体共生 / 進化 |
Research Abstract |
光合成ウミウシは餌である海藻の細胞質を吸い取り、葉緑体を自らの細胞に取り込んで光合成を行う。この現象はkleptoplasty(盗葉緑体現象)と呼ばれ、動物が光合成を行う稀有な例であるが、そのメカニズムはほとんど分かっていない。本研究はウミウシの餌となる緑藻類ハネモのオルガネラ(葉緑体、ミトコンドリア、核)を蛍光標識し、それらオルガネラのウミウシ内での動態変化をリアルタイムで観察する実験系の開発を目的にしている。初年度の研究より、この目的を達成するためには、「ハネモオルガネラの低蛍光標識効率」、「ハネモ内におけるGFP遺伝子発現の不安定性」の問題を解決しなければならないことが明らかになってきた(平成23年度研究実施報告書)。そこで平成24年度は、これら2つの問題解決に取り組んだ。具体的には、1)高発現型プロモーターを用いたGFPの発現増強と、2)ハイグロマイシン耐性遺伝子を用いた安定形質転換体の選抜を試みた。その結果、これらの試みは成功し、最終的に、安定にGFPを高発現する形質転換ハネモを得ることができた。またこれらの形質転換ハネモを用いてウミウシ内の藻類オルガネラのリアルタイムモニタリング解析を行い、当実験系に関する基礎情報を取得した。本年度における最も大きな成果は、本研究の基盤技術であるハネモの形質転換系に関する詳細な情報が得られたことである。ハネモの様な多核緑藻類の形質転換に関してはこれまで報告がなく、本研究で開発された形質転換手法は学術的に大きな価値があると考えられる。現在、ハネモ形質転換に関する研究成果について、学術雑誌への投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究により、本研究の目的を達成する上で2つの問題、「ハネモオルガネラの低蛍光標識効率」と「ハネモ内でのGFP発現の不安定性」を解決しなければならないことが明らかになった。そこで平成24年度は、優先的にこれらの問題に取り組み、解決までにこぎ着けた。現在、これまでに得られた研究成果を論文として発表するべく、最終確認のための実験を進めている。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、培養している形質転換ハネモをウミウシの摂取させ、ウミウシ内でのハネモの蛍光標識オルガネラを蛍光実体顕微鏡で観察し、それらの動態解析を行う。そして、これらの研究結果を論文の形にまとめて発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては、予定していた緑藻類ハネモのオルガネラ蛍光標識法の改良と、そのハネモを用いたウミウシ体内における植物オルガネラの動態解析を進めたが、得られた研究成果を論文として発表するためには、まだ幾つかの確認実験が必要である。このため補助事業期間延長を申請して承認された229,077 円を、次年度における論文発表のための実験、英文校正等の経費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)