2012 Fiscal Year Research-status Report
シャジクモ藻類ヒメミカヅキモから探る植物の発生進化の分子基盤
Project/Area Number |
23770277
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 淳 中央大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10424764)
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Keywords | ヒメミカヅキモ / シャジクモ藻類 / ゲノム / Major Intrinsic Protein / 転写因子 / 発生進化 / 有性生殖 / 多細胞化 |
Research Abstract |
単細胞シャジクモ藻ヒメミカヅキモを用いて藻類から陸上植物への発生進化の基盤となった分子機構とその進化過程の解明を目指している。その鍵分子として、新たにMIP(Major Intrinsic Protein)ファミリーに着目した。MIPsは生体膜に存在し水や低分子を選択的に透過させる水チャンネルタンパク質である。陸上植物ではアミノ酸配列の類似性から7つのサブファミリー(PIP、TIP、NIP、SIP、XIP、HIP、GIP)が同定されており、その一部は水輸送や乾燥ストレス等に対する水収支の調節に関与している。このようなMIPsによる水収支機構は、藻類から陸上植物が進化する過程で陸上環境への適応にともない多様化したと推測される。今回、ヒメミカヅキモ概要ゲノム配列とESTおよびRNA-seqの配列より8種類のMIPホモログ(CpMIPs)を単離した。緑色植物を含めた系統解析の結果、5種類のCpMIPsは単系統群を形成し、ヒメミカヅキモ内で多様化していることが示された。残りの3種類はそれぞれSIP、XIP、HIPのグループに属し、これらはすでにシャジクモ藻類の進化段階で存在していることが示された。いっぽう、陸上植物において主要な細胞間水輸送経路を担っている原形質局在型PIPファミリーはヒメミカヅキモゲノムからは見いだされなかった。これらの結果から、PIPsが多細胞シャジクモ藻類からコケ植物に至る進化段階で急速に多様化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、ヒメミカヅキモ中の植物転写因子ファミリーの数と種類を明らかにし、陸上植物で存在する転写因子ファミリーのかなりの数がヒメミカヅキモを含む単細胞接合藻の進化段階で既に存在している事を示した。加えて本年度は、陸上植物への発生進化にとって枢要な役割を果たしたと推測されるMIPファミリーに着目して具体的な系統解析を進め、シャジクモ藻類からコケ植物への進化段階で植物水収支システムの多様化が起きた事を示せた。いっぽう、植物転写因子ファミリーの解析については、特に低発現遺伝子のRNA-Seqアセンブルの精度の問題で正確な配列決定に時間を要し、アミノ酸配列の特徴解析とタンパク質系統解析が当初の予定よりも遅れている。そのため今回は、自己評価を(3)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き植物転写因子ファミリーの系統・機能解析を進める。MIPファミリーの解析について、陸上植物では、各MIPサブファミリーがそれぞれ異なる細胞内膜画分に局在する事が知られている。CpMIPsについてもGFPを用いた細胞内局在解析を行い、細胞内局在の多様化と発生進化との関係について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通りRNA-seq配列アセンブルの問題で当初予定していた研究が実施出来ず繰り越し金が生じた。翌年度以降の金額と合わせ、正確なアミノ酸配列の推定、系統解析、および形質転換による機能解析を行う。加えて、CpMIPsとGFPを結合したコンストラクトをヒメミカヅキモに導入し、その局在について精査する。
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