2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23780039
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宇佐見 俊行 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (50334173)
|
Keywords | エフェクター / 非病原力遺伝子 / 病原性 / トマト / トマト半身萎凋病菌 / レース |
Research Abstract |
平成23 年度の研究において、トマト半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)のレースを決定するエフェクター遺伝子(VdAve1)が見出された。VdAve1はトマトの真性抵抗性遺伝子Veに対する非病原力遺伝子であるだけではなく、菌のトマトに対する病原力を著しく増強する病原因子としても作用した。平成24年度に計画していた研究計画の一部はすでに平成23年度に達成できたため、国産の菌株におけるVdAve1の分布と病原性・レースの関係を調査した。その結果、調査した全てのレース1菌株は同遺伝子を持ち、一方で全てのレース2菌株はこれを持たなかった。従って、VdAve1の塩基配列よりデザインしたPCRプライマーを用いることで、トマト半身萎凋病菌のレースを的確に判別できると考えられた。VdAve1は本菌のレタス品種に対するレースも決定することが指摘されているため、このプライマーを用いて国内(茨城県)のレタスに新たに発生したV. dahliaeのレース検定を行ったところ、5菌株のうち4菌株がレース1、1菌株がレース2と判定された。従って、国内に未導入の抵抗性レタス品種を導入しても、国内にはすでにこれを打破するレース2が存在することが明らかとなった。一方、トマトに病原性を持たないV. dahliaeの菌株についても調査したところ、これらの菌株は一様にVdAve1を持たず、本遺伝子とトマトに対する病原性との関連性が示唆された。そこで、トマトに病原性を持たない菌株にVdAve1を導入したが、導入された菌株がトマトに対する病原性を獲得することはなかった。従って、VdAve1はあくまで病原力を補強する補助的因子であり、トマトに対する基本的な病原性を支配するものではないと考えられた。今後は、トマトに対する基本的な病原性を決定する遺伝因子を探索する必要がある。
|