2011 Fiscal Year Research-status Report
MAMPsシグナルに関わる新規リン酸化制御因子の解析
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23780048
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松井 英譲 独立行政法人理化学研究所, 植物プロテオミクス研究ユニット, 特別研究員 (20598833)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リン酸化プロテオミクス / 植物免疫 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究は、最新のプロテオーム解析手法により初めて同定されたMAMPsシグナルに関わる遺伝子群の機能解析を行い、植物免役システムの分子機構の理解を深めることにより、より効率的な品種改良を行うことで耐病性作物の作出を目指している。本年度はflg22(細菌の鞭毛由来のペプチド断片)とキチン(糸状菌の細胞壁成分)刺激によりリン酸化される因子について、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体のプールから、同定したタンパク質をコードする遺伝子破壊株の単離を試みた。得られた破壊株について、MAMPs応答の指標として、flg22処理による活性酸素種生成を測定した。これまでに単離した104遺伝子中38遺伝子についてROS生成に異常が認められることを確認し、これらをROS production abnormal mutant(ram)と命名した。今回のスクリーニングにおいて、flg22処理時の活性酸素生成を指標として同定した変異体のほとんどが機能未知の因子であったことから、リン酸化プロテオミクスを基盤としたスクリーニングが新奇シグナル因子の同定に非常に有用であることを示している。本スクリーニングにおいて同定したram1は、複数のMAMPs(flg22, elf18, AtPep1)刺激による活性酸素生産が、野生型の植物体と比較して有意に上昇していた。興味深いことに、ホモログ遺伝子の欠損変異体であるram1-like a(ram1la)では、逆に活性酸素生産能が低下していた。さらにMAMPs応答の指標であるMAPKの活性化について検討した結果、活性酸素生成と同様にram1では野生型と比較してMAPKの活性が上昇したが、ram1laでは活性化が抑制されていた。これらの結果は、RAM1遺伝子ファミリーがMAMP応答の制御に正と負の両面から重要な役割を果たしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較リン酸化プロテオミクスにより同定したMAMPsシグナル伝達に普遍的に関わると考えられた因子群のT-DNA挿入変異体プールから、同定因子をコードする遺伝子破壊株の単離に成功した。これら遺伝子破壊株を用い、flg22処理による活性酸素種生成を指標とした用いたスクリーニングを試みた結果、植物免疫ネットワークに関与する複数の変異体の同定に成功した。興味深いことに、ほとんどの因子が機能未知であったことから、これまでに明らかにされてこなかった新奇シグナルネットワークの解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
比較リン酸化プロテオミクスにより同定したMAMPsシグナル伝達に普遍的に関わると考えられた因子群のT-DNA挿入変異体プールから、flg22処理における活性酸素種生成を指標としたスクリーニングより、複数の活性酸素生成が異常になるram1変異体の単離に成功した。そこで、これら変異体に関して、細菌並びに糸状菌等の病原菌接種による抵抗性について解析を試みる。ram1は、野生型と比較して複数のMAMPs処理により有意に活性酸素種生成が誘導される。さらに、AvrRpm1を有するPseudomonas syringae pv. tomato DC3000の接種において、強く活性酸素種が蓄積したことから、植物の防御応答における活性酸素種生成への関与が強く示唆された。RAM1は機能未知の因子であるが、複数の推定のタンパク質相互作用部位を有していることから、リン酸化を介したタンパク質間相互作用によるシグナル伝達に寄与する可能性が考えられた。そこで、RAM1タンパク質の機能解析に向けて、大腸菌発現系や無細胞発現系などを用いてRAM1タンパク質の精製を試みる。また、植物体において、タグを付加した野生型もしくはリン酸化部位変異導入型の因子での相補を試みる。相互作用する因子の同定は、上述のタグを付加した因子を発現させた植物体を材料として用い、タグを利用して同定因子と結合しているタンパク質群を精製する。そして、精製したタンパク質について質量分析解析を行い、相互作用因子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RAM1遺伝子の単離ならびに変異導入型のタンパク質の作成に向け、一連の遺伝子操作試薬の購入を予定している。また、リン酸化制御の解析、そして相互作用因子の同定には、以下の高価な試薬類を必要とする。プロテアーゼ(Trypsin, Lys-Cなど)、プロテアーゼ阻害剤、フォスファターゼ阻害剤、脱塩カラム、リン酸化タンパク質およびtag付加タンパク質精製用の担体、抗リン酸化抗体、nanoLC-MS解析用のTip一体型キャピラリー逆相カラム、LC-MSグレードの高純度の溶媒類、タンパク質低吸着のプラスチック類
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[Presentation] 植物免疫シグナル解明の為のリン酸化プロテオミクス手法の確立2012
Author(s)
Hidenori Matsui, Yuko Nomura, Fumiko Kato, Ken Shirasu, Hirofumi Nakagami
Organizer
Establishment of phosphoproteomic approaches for plant signaling dissection
Place of Presentation
Nara, Japan
Year and Date
2012年3月19-21日
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