2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリリン酸蓄積変異株の復帰変異メカニズム解明-リン回収微生物の創成にむけて-
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23780083
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
廣田 隆一 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (90452614)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / phoU / 変異 |
Research Abstract |
申請者らが開発した驚異的なポリリン酸蓄積を示すphoU変異株の作製手法は、将来のリン資源問題に対処するためのリサイクル技術へ応用できる可能性がある。本研究では、この技術を実際の応用段階にさらに近づけるため、欠点である変異株の不安定性の原因を分子レベルで解明する研究を行っている。平成23年度は、phoU変異株から生じるリバータントの変異点の同定およびリバータントの発生率の測定を行った。phoU変異株は著量のポリリン酸を蓄積するが、2xYTなどの栄養培地で培養すると、ポリリン酸を蓄積せずアルカリホスファターゼ(AP)の活性が活性化したままのリバータント(HAP)と、AP活性が低下したリバータント(LAP)の2種類を生じる。それぞれリン酸取り込みに直接関係する Pstあるいはリン酸レギュロン制御系PhoRBのいずれかであると予想されていた。平成23年度の研究において、リバータントにおけるこれら遺伝子の変異を調べた。その結果、予想通りHAPはpstオペロンのプロモーター領域、LAPはphoB遺伝子領域内部に変異点が見いだされた。また、継代培養の回数とHAP、LAPリバータントの出現頻度を解析し、ポリリン酸蓄積の低下に伴って、リバータントの出現が増加し、継代を三回繰り返すことでほとんどのphoU破壊株がリバータントになることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. phoUリバータントの特徴の解析phoUリバータントの変異ターゲットとポリリン酸蓄積能喪失の原因解明においては、2種類のリバータントの変異ターゲットが同定するとともに、機能相補による原因解明も行い、ほぼ予定通りの結果が得られている。変異スペクトルの傾向をより明確にするために、追加実験を行うことを計画している。2.phoU破壊株の変異速度の解析phoU 変異株とリバータントの増殖速度比較を行った結果、両者の増殖速度が異なることが分かった。そのため、当初予定していたShapiroら(Shapiro A., Cold Spring Harb. Symp. Quant Biol., 1946, 228-235) の測定方法では、変異速度を解析することが困難であることが明らかになった。そこで、phoUリバータントの発生率をX-リン酸を含むプレートで生育するLAP、HAPのコロニーをカウントすることで測定した。その結果、三回の継代培養でほぼ全てのphoU変異株がリバータントに変化することが明らかになり、リバータントの発生率を明らかにすることができた。しかしながら、変異速度の定量的な評価は上述の様に困難であるため、今後異なるアプローチによって明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. phoUリバータントの特徴の解析H23年度の解析により明らかになった結果から、リバータント発生に関与する変異機構を明らかにする。変異機構に関わることが予想される因子の破壊株を作製し、これらの株においてphoUを破壊し、リバータントの出現頻度を調べることで実際に変異に関わる因子であるかどうかを明らかにする。また、PPKがY-family DNAポリメラーゼの活性化により適応変異に関係している可能性が示唆されているため、phoU変異後のポリリン酸蓄積がPolIV, PolVなどのY-family DNAポリメラーゼを介してリバータント発生に関わる可能性を検証する。2. phoU変異株の不安定性の原因解明不安定化に関わる因子はMT4, #29安定変異株の共通変異点に含まれると考えられるため、両者の全ゲノム解析によって得られた変異点データから、共通して変異している遺伝子を同定する。共通変異遺伝子の機能が既知のものであれば、その情報をもとにさらに絞り込みを進める。また、考えられる変異機構と不安定化の原因因子は同一である可能性も考えられるため、相互の実験の情報をフィードバックしながら進める。次に共通変異遺伝子の不活性化あるいは活性化によってphoU変異株が安定化されている可能性があるため、共通変異遺伝子の破壊株、過剰発現株をそれぞれ作製し、これらの株においてphoUの破壊を行い、得られるphoU破壊株の安定性を調べる。以上の解析から明らかにされるphoU破壊株の不安定化の原因あるいは安定化機構に基づいて、ポリリン酸を高蓄積するphoU安定変異株の作製を試みる。実際の応用では遺伝子組換えではなく変異誘導で変異株を取得することが望ましいため、培養条件の変化によって安定変異株を取得する頻度を高める方法、あるいは安定株を高頻度でスクリーニングする方法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画通り使用の予定(物品費1,000千円、旅費350千円、その他250千円)であるが、一般試薬類についてリアルタイムPCR解析の増加が見込まれるため、前年度の繰越額を充当する。
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Research Products
(5 results)