2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23780103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊福 健太郎 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (50359783)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光合成 / 環境応答 / 光化学系II / 酸素発生系 / 循環的電子伝達 / 分子進化 |
Research Abstract |
本研究は緑色植物特有に発達したOECホモログ群の分子機能を解明することを目指している。本年度はまず、各OECホモログに対するポリクローナル抗体を作成した。現在、それら抗体を用いてBlue Native/SDS二次元電気泳動やスクロース密度勾配遠心により、各OECホモログの葉緑体チラコイド膜における複合体形成の有無を評価している。一方、分子機能がある程度判明したOECホモログに関しては、さらなる機能解明を行った。強光照射下において損傷した光化学系IIの修復過程に関わることが示唆されているPPL1については、その欠損が光化学系II反応中心と光捕集タンパク質(LHCII)との相互作用に影響していることをクロロフィル蛍光解析、低温蛍光スペクトル解析、及び、生化学的解析によって認めた。ショ糖密度勾配遠心法では、PPL1はLHCIIを含む複合体との相互作用が示唆された。現在、PSII-LHCII複合体形成におけるPPL1の役割と強光ストレス耐性との関係についてさらに解析を行っている。一方、光合成の循環的電子伝達関わるNAD(P)H dehydrogenase 様(NDH-like)複合体の活性に必須だが、そのサブユニットとしては同定されていないPQL3については、GFPとの融合タンパク質を一過的に発現させる系を用いてその細胞内局在を解析した。その結果、PQL3の葉緑体外への局在が示唆された。また、NDH-like 複合体のサブユニットと判明したOECホモログに関して、混乱を避けるためにPhotosynthetic NDH Subunit (略してPns)を冠する新しいサブユニット名を、関係する研究者とともに提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PPL1とPQL3に関しては、光合成電子伝達鎖の機能調節因子としての新しい機能が解明できつつあると考えている。一方、PPDタンパク質に関しては、一部の分子に関して外国グループから論文発表がなされたため、選択と集中による戦略の見直しを行うことで対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、PPL1とPQL3に関して分子機能の完全な理解に向けて研究を進める。PPL1は相互作用する膜タンパク質分子(LHC)の特定、及び、組換えPPL1タンパク質と単離PSII膜を用いた再構成実験系による機能評価を行う。一方、PQL3については、PQL3欠損変異株における他の葉緑体NDH-like複合体サブユニット遺伝子の発現、及び、その遺伝子産物の蓄積パターンへの影響をより詳細に解析する。また、PQL3の細胞内局在に関しても、別の生化学的手法によっても確認する。最後に機能未知のPPDタンパク質に関しては、変異体と特異的抗体を用いた分子生物学的、生化学的解析を継続する。ただし、競合する研究グループの動向を考慮する必要があり、現在、必要な情報収集を行っている。場合によっては、共同研究を行うことも考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は予定していたよりも研究室で残存していた設備、及び、試薬を効率的に用いることができたため、次年度に研究費を一部残すことができた。その一部は次年度において、外国グループとの情報交換、ならびに共同研究の打合せを目的した海外学会参加のための旅費として使用する予定である。それに伴って現時点で研究計画の大きな変更はないと考えており、研究費は予定通り支出される見込みである。
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Research Products
(5 results)