2012 Fiscal Year Research-status Report
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23780103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊福 健太郎 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (50359783)
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Keywords | 光合成 / 環境応答 / 光化学系II / 酸素発生系 / 循環的電子伝達 / 分子進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、緑色植物特有に発達した葉緑体酸素発生系(OEC)タンパク質の分子機能を解明することである。本年度は、PsbPホモログの根源的機能を有すると考えられる原核生物型PsbP (CyanoP)の分子機能を解明すべく、Synechocystis sp. PCC 6803のCyanoP欠損変異株(⊿P株)を新たに作出し、様々な生育条件下における野生株との生育比較を行った。その結果、光化学系II (PSII)の酸素発生反応に必須であるカルシウム、塩素イオンを除いた培地で植え継ぎを繰り返すことで⊿P株の増殖の遅れ、PSIIの酸素発生活性の低下が顕著に観察された。そこでCyanoPのPSIIへの結合様式を明らかにするため、チラコイド膜の界面活性剤による可溶化条件を再検討した。そして最適化した界面活性剤を用いてチラコイド膜の可溶化を行い、Blue-Native PAGEやゲル濾過、ショ糖密度勾配遠心法によるPSII複合体の分離を試みた。その結果、CyanoPが含まれる複合体画分を得ることができた。 一方、CyanoPと進化的に最も近いと考えられるPPL1についても、シロイヌナズナPPL1遺伝子発現抑制株、及び、過剰発現株を用いて、様々な光条件下における野生株との生育比較実験を行った。その結果、PSII-LHCIIの安定性のみならず、迅速な集光機能の調節にPPL1が関わることを示唆する結果を得た。一方、活性型PSIIが局在するグラナチラコイドにはPPL1の蓄積がほとんど認められなかったことから、PPL1はPSII-LHCII複合体の形成過程に関わる可能性も考えられた。シアノバクテリアと緑色植物は異なる集光タンパク質を有することから、PPL1と CyanoPの分子機能は進化の過程で分化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近、海外のグループから、PsbPホモログの一つであるPPD1が光化学系Iの複合体形成に関わるという結果が発表された。我々も新しい知見を得ているが、別のグループからPsbPファミリーに関する総説も発表されるなど、年々競争が激化してきている。そこで現状、論文発表という面では我々は遅れていると判断した。出来るだけ早く成果をまとめて発表すべく努力していく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究動向の情報収集を行い、選択と集中による戦略の見直しを行った結果、まずは我々が先行していると思われるPPL1とPQL3の解析結果を論文にまとめることに集中することが重要だと判断した。他の機能未知のPPDタンパク質に関しては、昨年度作成した抗体を用いて相互作用するチラコイド膜タンパク質複合体の同定を進める。その結果に基づいて、今後さらに解析を継続すべき対象(遺伝子)を精査していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有設備の活用と試薬利用の効率化を徹底した結果、次年度に研究費を一部残すことができた。これらは消耗品の購入と培養室の電気代等を含む植物栽培に関わる経費に用いて、研究のさらなる推進に活用する。使用機器の故障等がない限り、大きな設備備品の購入は計画していない。一方、次年度は最終年度ということで、論文発表と海外の学会における成果発表の費用を多めに計上する予定である。それに伴う研究計画の大きな変更はなく、研究費は予定通り支出される見込みである。
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Research Products
(9 results)