2012 Fiscal Year Research-status Report
フラッシュフラッド発生危険渓流の抽出に向けた発生機構の解明
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23780162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮田 秀介 京都大学, 防災研究所, 助教 (80573378)
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Keywords | 鉄砲水 / 降雨の空間分布 / 山岳流域 / 降雨-流出モデル |
Research Abstract |
河川における急激な水位上昇であるフラッシュフラッド(鉄砲水)は人的被害につながることが多いにもかかわらず,発生予測が難しくハード・ソフト両面の対策が確立していない。そこで本年度の研究では,フラッシュフラッドの現象把握と発生に寄与する要因を解明するために現地観測を行った。神通川水系金木戸川の源流域を対象流域とし,渓流の水位観測および雨量計による雨量観測を行った。観測流域は,流域面積が約60km2,比高差が約1700mの非常に急峻な山岳流域である。また,Cバンドレーダのデータにより,降雨の空間分布についても検討した。いずれの降雨イベントにおいても,降雨初期段階での急激な水位の上昇が観測された。最も大きく水位が上昇した降雨イベントでは,川幅約30mの地点において水位上昇開始1時間に約1mの水位上昇が起こった。従って,対象流域は斜面・河川地形,土壌特性などの場の条件により,降雨に伴う急激な水位上昇が発生していると考えられる。長時間多雨型の3降雨イベントと短時間集中型の3イベントにおけるレーダ雨量を比較すると,短時間集中型イベントでは降雨の空間分布が大きく1kmメッシュ総雨量が10倍以上の幅を持っていた。このような短時間集中型イベントにおいて,降雨が集中した支川の合流点の下流では特に急激に水位が上昇していた。このような水位(流出)の上昇による人的被害について検討するために対象流域のような山地流域に適した降雨―流出モデルを構築し,対象流域への適用を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には,主に現地観測を行うことで,対象流域におけるフラッシュフラッド現象を実測データに基づいて把握することができ,流出特性についても検討することができた。またレーダ雨量データを同時に解析することで,対象流域は降雨の空間分布が非常に大きく,それが急激な水位上昇に寄与することがわかった。昨年度の洪水などによる河川水位観測の失敗を踏まえた上で本年度は現地観測を行った。そのため,渓流沿いの複数地点で質の高いデータを得ることができ,降雨の空間分布がフラッシュフラッドに及ぼす影響を解析することができた。これらの情報は,フラッシュフラッドによる人的被害の発生指標を導くための降雨-流出モデルを構築,更正するためにも非常に有益な情報であり,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現地観測を継続することで,観測結果に基づいたフラッシュフラッドの現象把握を行う。今年度に構築した流出モデルをもちいて,まずはフラッシュフラッドによる人的被害の発生しやすさを表す指標となりうる流出特性を抽出する。さらに対象流域の周辺流域にも適用することで,広域を対象としてフラッシュフラッド発生危険渓流を特定する方法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては,現地観測に必要な測器および消耗品を購入する。旅費は,現地観測旅費に加えて,解析モデルに関する打ち合わせ旅費および学会における研究発表旅費として使用する。謝金は,広域を対象とした解析を行う際に作業補助員を雇用する。研究成果を投稿論文として学会誌等に公表する際の投稿料をその他として計上している。
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Research Products
(4 results)