2011 Fiscal Year Research-status Report
日英における大学の地域連携システムに関するアクションリサーチ
Project/Area Number |
23780227
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中塚 雅也 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40432562)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流,英国 |
Research Abstract |
英国ニューカッスル大学の農村経済センター(Center for Rural Economy)に長期滞在し,英国の地域連携活動に携わりながら,その体制や地域支援プログラムについて調査をおこなった。特にThe Northern Rural Networkプロジェクトに焦点をあてた事例研究をおこなった。このプロジェクトは大学が中心になり,地域の多様な主体が連携して地域の内発的発展をすすめる取組であり,センターの中心プロジェクトの一つである。 結果,The Northern Rural Networkは,構造転換を求められていた北部イングランドの農村地域の社会経済条件,新内発的発展論の理論的展開を背景に,公共,民間,ボランティア等の地域の各セクターの連携にもと,大学が中心となり,外部資金援助を得ながら運営されてきたこと,その展開は3つの段階に分けられ, セミナー等を通した質の高い情報獲得・共有の機会提供を通して,1,300人におよぶ幅広い会員を有する地域ネットワークとして成長してきたことが分かった。 さらに,この間の活動展開とステークホルダーからの高評価の要因としては,農村地域の人的資本,社会関係資本の強化を目的とした学習ネットワークとして,地域を限定しつつも開放的に設計されていること,大学が主導することによりセミナーなどの活動の質を保証し,利害関係からの独立性を保っていること,さらには,公的な資金援助により無償でサービスが提供されてきたことなどがあげられた.しかしながら,その一方で,継続的な活動資金調達や支援と学術研究の関係づけなどが,大きな課題となっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目的である,「英国の大学の地域連携システムを,社会的条件との関係のもとで明らかにし,その要点や課題を分析すること,そして,その英国での知見を神戸大学の地域連携システムに実践的に反映させ,評価分析することを通して,我が国の地域連携システムの実践的,制度的発展を図ること」については,詳細な現地調査をおこなった結果,連携システムの実態,要点や課題を明らかにすることができた。今年度には,その知見を日本に反映させることが課題であるが,その準備も順調に整っている。また,第二の目的にあげた,具体的な地域リーダー育成プログラムとして,The Northern Rural Networkを事例とした参与観察をおこなった。その成果の一部は,学術論文として投稿し,掲載が決定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
英国での事例調査の知見の神戸大学農学部への移転による実践的研究をおこなう。神戸大学農学部連携センターを事務局にして,新しい人材育成プロラムを企画し,実験的に実施する。また同時に,地域連携センター全体の運営についても改めて制度設計をおこない,それに基づいた制度の改良を具体的におこなう(計画,実施)。以上の取り組みをすすめた後,成果や課題の分析をおこない(評価),改善策を実行する(行動)。人材育成プログラムのなかでは,地域リーダーおよび地域支援者の機能やナレッジについて調査をおこなう。 具体的には,我が国の農村部での学習ネットワーク「農の学び場-Rural Learning Network-」の設立をすすめ,セミナーやワークショップをとおして,人材育成とネットワーク形成をすすめるながら,そのシステムと効果の分析をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
農村地域学習ネットワークの基盤を形成するために,第一に,ITCシステム(ウェブページ)を整備する。また,それらの推進主体としての「実践コミュニティ」の育成のために,図書購入費および謝金等を使用する。 また,国内の先進事例調査および海外学会参加による情報収集のために旅費を使用する計画である。
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